ノロノロと迷走を続けた台風10号。大雨など長期間に及んだ影響は漁業にも及んでいます。品薄による値上げだけでなく、そもそも仕入れ自体に苦慮する店も。
三重県尾鷲市の尾鷲漁港。
沿岸では定置網漁が行われていて、台風10号の影響で約1週間ストップしていた漁が9月2日に再開しました。
4日朝は、ヘダイやカマス、コガツオなどが水揚げされました。
「水揚げ量はこの2日間は少なかったですけど、きょうは多かった。再開できてちょっと安心です」(丸友丸 漁労長 東幸広さん)
台風の影響で約1週間も漁が止まるのは、初めてだといいます。
「水揚げができない分、人件費はかかるので、その分はマイナスに。なるべくなら台風は来てほしくない」 (東さん)
ゆっくりとしたスピードで進路も迷走した今回の台風10号。
東海地方でも台風が近づく前から大雨になるなど、漁業への影響も長期化しました。
「タイの良いのが無い。アジも無い。カニもカキも無い」
名古屋市中区大須にある「魚安商店」。
愛知県産や三重県産など「地のいい物」を中心に取り揃え、飲食店の関係者も足しげく通う鮮魚店です。
3日は店頭にタイやキンメダイなどが並んでいましたが、2日までは品薄の状態だったといいます。
「今まで40何年やってますけど、ここまで台風が遅くて、荷物がないっていうのは初めてじゃないですかね。普段の台風だと1~2日くらいで通り過ぎて、魚なども浜の水槽に入っていたり、うちの水槽で何とか回すことはできるけど」(魚安商店 弘中孝宜 社長)
この店に魚を卸す人は――
「1週間くらいかなり商品がなくて、お客さんに頭さげっぱなし。30年以上、魚を売っているけど、ここまで無いのは初めてです。きょうから本格的にやっと漁師が漁に出てくれて、今週木曜日からようやく魚がまともにそろえられるかな」(かね大商店 鮮魚部 磯部良満さん)
魚安商店では、魚の仕入れ値が、すべてにおいて2割から3割ほど高くなったといいますが、そもそも入荷が困難な状態だったといいます。
「南のほう、淡路島とか、九州だとかの魚が入らない。なおかつ愛知県も漁が出ないので、タイの良いのが無い。アジも無い。カニもカキも無いというような状態。本当に飲食店さんも困られたんじゃないかなと思います」(弘中社長)
飲食店では調理を工夫し、メニュー変更も
「台風による漁獲量の減少、飲食店にも影響が及んでいます」(望木聡子アナ)
名古屋市北区にある「魚洋丸」。天然の魚にこだわった居酒屋です。
店内のいけすには、立派なクエとキジハタが悠々と泳いでいます。
いまは、大きな魚がゆったり泳げるほどスペースがありますが、台風の影響を受ける前はたくさんの魚がいました。
Q.今日いけすの中の魚の種類が少ないようですか?
「そうなんですよ。台風が来るっていうのは知っていたので、たくさん仕入れておいたが無くなってしまう。使っていくものですから、このくらいの種類しかない状態です」(魚洋丸 大将 小川洋永さん)
店は通常通り営業していますが、ランチで提供するメニューに台風の影響が――
「この時期ですと戻りガツオをよく使うんですけど、とれなかったので、代わりにスズキを昆布締めにしたり、メカジキマグロを使ったりしています」(小川さん)
希望する魚の入荷が途切れることも見越して、魚を昆布じめにして、長持ちさせるなど調理を工夫。
秋の味覚「サンマ」台風の影響は――
台風が過ぎ漁が再開したことで仕入れの不安は解消されますが、いつでも天然魚の料理を提供できるよう試行錯誤が続きます。
「師崎に直接仕入れに行ったり、自ら釣ってきた魚を水槽に入れたりして、自分たちで魚を確保する。そういうお店をやってますので、こういう形を続けていきたいと思います」(小川さん)
一方、秋の味覚のとしてこれから出回り始めるのが「サンマ」。
今回の台風10号の影響はないか聞いてみると――
Q.サンマは台風とは関係ない?
「遠洋でサンマの漁はしているので、影響はないと思います。ここ数年いいサンマの状態になるのが、10月入ってからという年が多いので、今年もサンマは出ていますが、小ぶりで小さいものなので、まだうちでは扱えない。まだあと1カ月くらいはかかるのでは」(小川さん)