世界の水泳界が、ドーピング疑惑で揺れています。アメリカメディアによると、東京オリンピックの前、中国の選手から禁止薬物の陽性反応が出ていたのに、出場が許されていました。国家レベルの大騒動になっていますが、今後への影響はあるのでしょうか?
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そこで今回の#みんなのギモンでは、「中国の“ドーピング”なぜ不問に?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●ワリエワは“金剥奪”中国はOK?
●迫るパリ五輪…影響はある?
■中国側「フェイクニュースだ」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「パリオリンピックが近づいています。そんな中、世界の水泳界が揺れています」
「2021年の東京オリンピックの前、中国の複数の選手から禁止薬物の陽性反応が出ていたのにオリンピックへの出場が許され、複数の選手が金メダルを獲得していた――。アメリカメディアはこう報じました」
森圭介アナウンサー
「ドーピングに関しては、選手本人が意図していても意図していなくても、禁止薬物の陽性反応が出たら一律にアウトになるという認識なんですけど、どうしてこういうことになったんですか?」
小野解説委員
「そういう判断にならなかった、ということですね。アメリカメディアによると、もともとアメリカのアンチ・ドーピング機構が『この問題が隠ぺいされている情報がある』と声を上げました」
「これに対して、出場を許可した世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は『決断は正しかったと確信している』と主張しました」
「中国外務省の汪報道官も『報道は虚偽の情報で事実無根だ』、つまりフェイクニュースだと真っ向から反論。国家レベルの反応まで出るような、大騒動になっています」
■当時15歳…フィギュア選手の騒動
小野解説委員
「思い出していただきたいことがあります。ドーピングの疑惑でオリンピックに出場できるかどうか、2年前に大きく取りざたされたのが、ロシアのフィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手です」
「2022年に開催された北京オリンピックで、当時15歳のワリエワ選手はロシアオリンピック委員会(ROC)の選手として出場し、団体を1位に導きます」
「しかしその直後、ドーピング疑惑が発覚。個人では出場こそ認められたものの4位と振るわず、団体の順位も暫定のまま、大会中のメダル授与式は行われませんでした」
桐谷美玲キャスター
「覚えています。ワリエワ選手のつらそうな表情が、すごく印象に残っていますね」
■仲裁裁判所がワリエワ選手に「処分」
小野解説委員
「当時、ワリエワ選手側の言い分としては『祖父の心臓の薬を間違えて飲んだ』『クリスマスに祖父と同じグラスで飲み物をシェアしたのが原因かもしれない』と報じられていました」
「しかし北京オリンピックから2年が経った今年1月、スポーツ仲裁裁判所(CAS)はワリエワ選手に4年間の資格停止という処分を出し、これを受けてフィギュア団体ではワリエワ選手のポイントを剥奪しました」
「ROCの1位が取り消され、アメリカが金メダル、日本が銀メダルに繰り上がりました」
鈴江奈々アナウンサー
「こういう形で順位が変わるというのは選手の皆さんにとっても複雑な思いでしょうし、ワリエワ選手にとっては厳しい結果となりました。間違えて飲んだ、という説明が認められなかったということなんですね」
■陽性反応も出場可…中国側の説明は?
小野解説委員
「主張したことは言い訳だとして、認められなかったということなんですね。さらに、検出された量も一定を超えていて多かったといいます。そしてこの時に問題になったのが、『トリメタジジン』という薬物です」
「今問題になっている、中国の選手らから検出されたのも、トリメタジジンです。アメリカのニューヨークタイムズ紙によると、2021年の東京オリンピックが開催される7か月前、中国の水泳選手23人から禁止薬物のトリメタジジンの陽性反応が出ました」
「しかし、陽性反応が出た選手らは東京大会に出場し、3つの金メダルを含む複数のメダルを獲得したといいます。ではなぜ、出場が許されたのでしょうか? 中国側の説明によると、選手たちは自分たちが知らない間に薬物に汚染されていたといいます」
忽滑谷こころアナウンサー
「私はスポーツキャスターとして様々な現役アスリートに話を聞きましたが、皆さんドーピングに関してかなり注意深く慎重に判断されていて、目を離したもの、人からもらったものは絶対食べないですし、服用された風邪薬などもすごく注意しているとのことでした」
「『知らない間に薬物に汚染』というのは、どういう状況なのかいまいち理解ができないですね」
■ホテルのキッチンに痕跡…ナゼ?
小野解説委員
「ニューヨークタイムズ紙によると、選手たちは国内大会のため同じホテルに宿泊していました。そのホテルのキッチンから、禁止薬物の痕跡が発見されたといいます。流しの排水溝や調味料の容器、調理台の通気口などからです」
「つまり、ホテルで出された食事をとっているうちに、知らず知らずのうちに禁止薬物を少量摂取してしまった、食事が薬物で汚染されていたということです。ただ、この中国側の報告では薬物がどこから来たのか、なぜキッチンにあったのかは特定されませんでした」
「専門家にも聞いてみましたが、トリメタジジンは食品添加物にあるわけでもないので、『こういうことは考えにくい』とおっしゃっていました」
■「トリメタジジン」はどんな薬物?
森アナウンサー
「とは言え、選手たちは知らない間に摂取していた…。知らなくてもダメなんじゃないかなという理解なんですけれども、知らなかったら大丈夫なんですか?」
小野解説委員
「例えばサプリメントの中に禁止薬物が含まれていたら、知らなかったではすまないから違反になります。ただホテルの食事にもし含まれていたら、それは選手に過失はないのでセーフということになるそうです」
「選手たちの食事になぜか知らぬ間に入っていたというトリメタジジンは、もともと狭心症や心筋梗塞など心臓病の治療に使われる薬で、心臓などの血管を広げる作用があります。これがスポーツで使われた場合、持久力などのパフォーマンスを高める可能性があります」
「そこで世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は、これを禁止薬物にしています」
■WADAが声明…「過失なし」の根拠は
桐谷キャスター
「今回は薬物は検出されたものの『選手は知らなかった』という主張が認められた、ということなんですか?」
小野解説委員
「その点についてWADAが声明を出しました。コロナ禍で現地調査はできなかったものの中国側から詳細な資料を求め、独立した専門家と協議して『食事の汚染説』を慎重に検証したということです」
「そしてトリメタジジンの濃度が一貫して低く、数日間にわたり採取された検体が陽性と陰性の間を行き来した、つまり検出された薬物がわずかだったことを理由に、中国側が提出した資料に不正行為の証拠はなく、選手には過失もないとみられると結論づけました」
鈴江アナウンサー
「検出されたものが少量だと、ドーピングとしての効果もあまり発揮されないレベルだったということなんですか?」
小野解説委員
「WADAも少量のトリメタジジンによって競技に影響があったかどうか検証しました。その結果、不正な行為はないと判断した、少ない量だったから競技には影響しなかったという判断になりました」
■仲裁人「徹底してチェックする組織」
小野解説委員
「では結局のところ、クロなのか、シロなのか? 国際的なスポーツに関するトラブルの解決を目指すスポーツ仲裁裁判所で仲裁人を務める早川吉尚さんに聞きました」
早川さん
「トリメタジジンは禁止薬物の中でも悪質性の高い薬物だと考えられています。WADAはドーピングを前のめりなぐらいに徹底してチェックする組織なので、中国側からの資料もかなり詳しく調べたはずです」
「そのWADAが、疑いを持つ証拠が得られなかったというのだから誰が調べても同じ結果になったでしょう」
■パリ五輪では重点的に調べる対象に?
忽滑谷アナウンサー
「ということは、今回はシロとみていいということですか?」
小野解説委員
「そうとも言い切れないんです。トリメタジジンのドーピング件数は近年急増。ニューヨークタイムズ紙によると、中国では過去にもオリンピックの金メダリストが陽性反応を示して出場停止処分を受けています。中国の選手の摘発例は過去にも多くあります」
「そのため早川さんは『あくまで嫌疑が不十分ということです。WADAは中国の選手について100%潔白だとは考えていないでしょう。したがってパリオリンピックではより重点的に調べる対象になるでしょう』とみています」
鈴江アナウンサー
「オリンピックは4年に1度で、そこに向けて世界中の選手の皆さんがしのぎを削ってきた最高峰の舞台なので、こういった疑いがかけられることがないようになってもらいたいですね」
小野解説委員
「選手の健康はもちろん、オリンピックを楽しみにしている世界中のファンのためにも、誰もが納得する結論と証拠を示してほしいと思います」
(2024年4月25日放送「news every.」より)
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4 comments
なぜ不問かって?それは金が動いているからにつきる。
結局、世の中はお金か?
薬物検査でひっかかるのって、いつも、中国とロシアだよね。
WADAは、強烈にバイアスのかかった「ブラックボックス」。WHOと同じ。