今、関心が高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースです。今回は、新たに始まった備前焼の海外富裕層ビジネスです。担当は堀さんです。
(堀靖英記者)
「備前焼といえば、岡山を代表する工芸品です。一方で、日本の伝統的工芸品全体は今、岐路に立っています。生産額はこのように減少を続けています。お二人は、備前焼を日常で使いますか?
(岸下恵介キャスター)
「私は使うんですよ。食器の小鉢や箸置きに」
(中塚美緒キャスター)
「家にあるが、食器は既製品が多い。どちらかというと鑑賞用」
(堀靖英記者)
「こうした中、備前焼を日用品としてではなく、海外の富裕層をターゲットにしたアートとしてビジネスを進めようという試みが始まっています」
7月に開かれた、4人の備前焼作家の記者会見。ヨーロッパで、高値で取引される現代アートの現状を見てきました。
(備前焼作家・森大雅さん)
「このくらいの(大きさの)作品で2000万円くらい。すごく高いなと思った」
この世界の現代アート市場に備前焼も割って入ろうとしています。
(備前焼作家・馬場隆志さん)
「王族の人が窯ごと買いたいと言い出したらどうしようと、期待をして行った。結果としては全く売れなかった」
備前焼が海外の富裕層を振り向かせるには、何が必要なのでしょうか?
シンプルでいて、手作りの味わい深さがある備前焼。割れにくいため、庶民の日用品として愛されてきました。しかし大量生産の工業品に押され、売上高は全盛期の4分の1程度に減ったと言われます。
そこで模索しているのが、海外の富裕層をターゲットにしたビジネスです。プロジェクトに関わるEU日本政府代表部の二宮参事官は、その可能性をこう語ります。
(EU日本政府代表部・二宮悦郎参事官)
「(価格は」10倍どころじゃないかもしれませんね。博物館に展示されるようになれば20倍とか、そういう世界になるのでは。これからの戦略次第」
(中塚美緒キャスター)
「20倍…そんなに高く売れるもの?」
(堀靖英記者)
「二宮さんによると、備前焼のような日本の伝統工芸品は、日用品とアートの中間の立ち位置だといいます。これをアートに寄せていくことでこれまでにない付加価値がつくだろうというんです。
実は、世界の富裕層は資産の5%をアートで持っているというデータがありまして、世界のアート市場は約9兆円といわれています」
(岸下恵介キャスター)
「二宮さんもおっしゃっていましたが、戦略次第ということになってきますよね」
(堀靖英記者)
「戦略として、海外で何が受けるのか研究することも必要です。海外訪問を機に、作家たちは新しい作品に取り組んでいます」
備前焼の町、備前市伊部で作陶活動を続ける森大雅さん。彫刻の技術を生かしたいわゆる細工物を得意としています。この日は、ベルギーのギャラリーから依頼を受けたオブジェを作っていました。
(備前焼作家・森大雅さん)
「ベルギーのギャラリーが僕の作品を見て、ちょっと大きなサイズ感で作ってほしいと言われた」
元は手のひらサイズのオブジェでしたが、ヨーロッパで好まれるのは、広いリビングでも引けをとらない大きさだといいます。
(備前焼作家・森大雅さん)
「アート作品を買う人は、大きい家に住んでいるのでは」
森さんと一緒にヨーロッパを訪問した備前焼作家、馬場隆志さんも大いに刺激を受けて帰ってきました。大学で彫刻を学び、独創的な造形にこだわってきた馬場さん。備前焼がアートとして評価される可能性を感じました。
(備前焼作家・馬場隆志さん)
「(Q:従来の備前焼のイメージではないですね)彫刻作品として見てもらいたい。備前焼という感じではなく、アートとして。そういったものが受け入れられる土台を(ヨーロッパで)見たので」
こうした作家自身の取り組みだけでなく、海外のデザイナーと組んで、魅力を引き出してもらうことも一つの手だと二宮さんは言います。
(EU日本政府代表部・二宮悦郎参事官)
「作家は作品作りに集中して、場合によっては欧米のデザイナーと組むなど役割分担しながら、日本の備前焼がアートとして売れていく世界を作っていく」
(堀靖英記者)
「海外の富裕層に注目されるために、これまでより大きく、芸術性の高い作品に取り組む姿を紹介しました。また、海外のデザイナーと組むことも、一つの手だといいます。生産が減り続けている今、こうした付加価値をつけることが大事です。優れたものづくりにはまっとうな対価を払う仕組みづくりが、今、必要とされています」
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アートとは、唯一無二のアイデア。