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#スカッとする話 #スカッと #朗読 #修羅場
夫である啓介は私にショップからの広告 はがきを渡すくらいの適当な態度で離婚 届けを手渡してき たあまりに唐突な状況に私は驚きしばらく 方針しながら記入済みの離婚届けを 見つめるどうしたボールペンならあるぞ 印鑑がないとかちょっと待って離婚どう いう 意味私を見すよう調でそう言うと胸 ポケットからタバコを取り出し火をつけた この旅館は売却する私は耳を疑った先祖 代々続いた死旅館を 売却最近になって旅館の女将でもある お母さんが体調不良でネタきり状態となっ てしまったのは確かで あるすでにホテルグループとの話は進め てる に俺は実質的に旅館業務に一切の手を出さ ずに収入を得られるんだすごい だろちょっと待ってせめてお母さんの体調 が良くなってから旅館の話とかその離婚の 話とか を彼は私を下げんだ笑を浮かべていたこの 旅館の売上げと従業員はもらって いく待って冷静にせめてお母さんの具合が 回復して旅館についての話し合いが進んで からその後で私たちのことを話し合えない の時間稼ぎのつもりかまあいい今日は帰る よこの旅館をどうするかの決定権は俺に あるんだ し啓介が事務所から出て行った後私は呆然 と立ち尽くしてい た部屋の扉が開く私はは啓が戻ってきたの かと思い一瞬体を硬直させたけど現れたの はお母さんであっ た今朝までネタきり状態でパジャマを着て いたお母さんはいつも仕事で来ている無事 の着物に着替えて立っているそして微笑み 方針している私の肩を抱くと静かにごめん なさいねと謝罪したさて私のだ ね今まで見たことのない上品で少し いたずらっぽい笑顔が目の前に広がって [音楽] いる私の名前は優香大きなビルが並んだ 都内のオフィスビルで働くことが憧れだっ たこともあり長年に渡り輸入ワインや ビールなどを取引する書者で働いてい たしかし今は数年前に移住し夫である啓介 の実家が営む旅館で若女将として働いて いる40代半ばで勝者のキャリアを失う ことにはそれ相応のためらいもあったが今 はこの旅館で働くことにやりがいを感じて いる毎日 だ旅館は随分と昔から代々続いている死に であり深い三間の奥に立てられた秘境の ような赴きが ある春になれば桜の花が咲夏には青葉秋に は紅葉が美しくそして今の季節は雪化粧さ れた危機に囲まれて いる視界に広がる風景は全て白銀に染まり 温泉から湧き上がる湯気だけがぼんやりと 夜空に まう私が初めて夫と共に旅館を訪れた時に 思わず発した言葉は不安だの一言 元々旅館を経営していた義父が高し義母の くみ子さんが1人になってしまったため私 と啓介も旅館に務める運びとなっ た結婚した頃に啓介はいずれは実家の旅館 を継ぎたいと私に宣言していたがそれは 啓介が仕事で大変そな時に言う愚痴のよう なものだと思っていて私は本気にしてい なかった しかし義父がなくなってすぐに啓介は仕事 を退職し た仕事を退職した日の夜別会すら開催して もらえなかった啓介は自宅で酒を 飲むコンビニで買ったであろう安いワイン を飲みながら上期限でスマホ画面に 映し出された麻雀ゲームをして いる私にはんだかわからないけれど介は スマホの麻雀ゲームにはまっていて対局 すればするほどゲームの中でのランキング が上位に食い込めることを生きがいにして いる よすなき義父も麻雀が好きだったらしく死 旅館を改築するという機会に麻雀ルーム なる部屋を作って いる宿泊のお客様用ではあるが希望があれ ば人数合わせのために旅館のスタッフが 参加することもあるそうだ [音楽] そのような話を聞いていた啓介はこの旅館 で働くことをとても楽しみにしてい たいつお客様から一緒に麻雀しましょう なんて誘いが来てもいいように麻雀好き そうな中年の男性に微笑んで受付で立ち 続けてみ たいしかし実際に働いてみれば麻雀の誘い を受けるどころの忙しさではなく夕飯の 準備や風呂の準備など手の回らない箇所の 手伝いに向かうなど旅館での啓介の業務は なかなかに激務であっ た私のイメージしていた女という仕事は もっと華やかでただニコニコとお客様を 出迎えるくらいに考えていたのだが意外と 裏方の仕事が多く覚えることも多く宿泊し てい たそんな私をお母さんは優しく指導して くれる [音楽] 初めて教わったのは鶴の橋置きの作り 方この旅館でお客様に提供する料理に使わ れる橋置きはスタッフ袖手で全て手作りし ていると いう休憩中や仕事の合間に旅館のスタッフ などとの交流の意味も込めて一緒に折り紙 をしているとすぐに旅館のスタッフとも 仲良くなれ たいずれは啓介と優香さんにこの旅館を 継いてほしいと思ってるの私が元気なうち は全力であなたたちをサポートするから ね間力を当に超えているようには見えない 上品で美しいお母さんが 微笑む長年振る舞ってきた所作が彼女の身 に染み込んでいるようでその一挙手一等速 が旅館の女将という感じがする 私もお母さんのような女になれるだろうか そんな風に考えながらも義母であり女将で もあるくみ子さんに尊敬のまなざしを 向けるお母さんの方としても私の前向きな 視線を評価してくれているようで可愛がっ てくれてい た私は若女としてのそして啓介は支配人と しての修行を2ヶ月ほど続けたある日の ことであ 優香さん昼くらいから啓介を見ていないん だけど何か聞いてい ない受付でパソコンを見つめる私に お母さんは少し焦った表情で聞くと素早く 手に持ったタブレットで客室の予約状況 などを確認して いる見ていないです支配人室にはいないの です か啓介には支配人としての業務を覚えて もらうためにまずは旅館内の各部門に順次 配属しようって話だったのよそれで今は 雑用がかりをさせているんだけど ね啓介は支配人補佐なのに仕事していない んです か自分の息子ながら恥ずかしい話よね掃除 もきちんとできないし好きあれば逃げて いるようねは 全くお母さんは小さく肩を落とす何気ない 落ち着いた会話の最中にもお母さんは片手 にタブレットを持って宿泊者の情報を確実 に管理していた私はスマホの着信を確認 するが啓介の名前は ない優香 さん呼ばれて私は顔をあげたお母さんはの 様に感づかれないように私に顔を近づけ 小さな声で言うごめんなさいちょっと胸が 苦しいわ少し休ませてもらってもいい かしらえはいもちろんです大丈夫ですか 何か私にできることはいえ大丈夫よ私がい ない間はあなたがおよごめんなさいね何か 分からないことがあったら連絡して それからしばらくの間お母さんは旅館に顔 を出さずに従業員用の部屋で横になる時間 が増えていっ た時々私服で部屋から出てくることがあっ たのだがお母さんは具合が悪いから病院に 行ってくるねと言って1人で車で出かけて しまうお母さんの体調を心配して旅館の 業務が終わった後に何度かお母さんの部屋 を訪れ隊長はどうですかと聞いてみたが いい返事はなかったごめんなさいねなん か所も病院回っているんだけどこの胸の 苦しみの原因が分からなくて ねお母さんは申し訳なさそうに私に謝罪 する私は本当に判断に困るような事態に ならない限りは女将としての業務をなんと か行うことができるようになっていた スタッフとのコミュニケーションも自分で はできている気がするけれど誰も将来的に はこの旅館の支配人となる啓介の不在に ついては触れなかったそれがむしろ旅館 スタッフ一同が啓介に対して期待してい ないような気がして焦った私はその夜少し 酔った状態で帰宅したけに話をすることに したなんだよ怖い顔し てお母さん最近体調が悪くてほとんど旅館 の仕事ができていないって知っ てるそんな話かとうんざりした様子で畳の 上に座り込む 啓介旅館から少し離れた場所に住居として の家がある元々はお母さんと岐阜が暮らし た家なのだがお母さんはほとんど旅館内の 休憩所で寝泊まりしていて実際にこの家に 来ることはほとんどない 未だに引っ越しした際の私たちの荷物など を整理できていない状態でいくつかのダン ボールが積んであるそのダンボールを 背もたれにするような形で啓介はあを描い たなあ真面目な話だけどさ母さんがこの まま具合悪くて動けなかったらスタッフの スケジュール調整とか運営の統括とか全部 俺がやることになるわけじゃん 当たり前じゃないそれで一生懸命お母さん から指導してもらっているんでしょ ああなんか思ってたのと違うっていうか ちょっと思ってたのと違うとかそういう 甘い考えを言ってる前にきちんと旅館に出 て仕事してよ ね私が少しきつい調子で行った時はあった のだが次の瞬間に急に介ははと 立ち上がり私を睨みつけてきたそれが あまりに唐突だったために私は思わずきゃ と小さな悲鳴をあげると啓介は少し気まず そうな顔をして部屋から出ていって しまう部屋の壁にかかっている時計の針は 22時を刺しているその日啓介は朝になっ ても部屋に戻ってくることはなかっ た啓介は旅館の仕事を完全に放棄するよう になってしまいお母さんの体調も良くなら ない日々がしばらく続いた雪こそ降ら なかったが寒さがさらに厳しくなる日が 続い た私が旅館入り口玄関を掃除していると すぐ近くに見える渓流の先からかかな鳥の 鳴き声が聞こえるおやと私が目を凝らすと 渓流の近くの折れた木の枝に妙な何かが いる大きさは鳩くらいだろうか遠目に見る と頭以外が全部白っぽく見えるがよく目を 凝らすと白黒のゼガをした鳥だ庭鶏みたい な奇妙な頭をしているまるで寝癖のついた 少年みたいな頭をした鳥は木の枝から じっと渓流の水面を見つめている山セミだ 私がそのとても珍しい鳥に見れていると坂 を登ってくる1台の車の音に驚いた山は 素早く木々の奥へと隠れて しまう車から降りてきたのはスーツ姿の ケスねちょっと今川の向こう側にすごい 珍しい鳥が話が ある私の話を切り捨て言葉少なに私を連れ て控室に向かう 啓介は私にまるでショップからの広告はき でも渡すくらい適当な態度で離婚届けを 手渡してき たあまりに唐突な状況に私は驚きしばらく 方針しながら記入済みの離婚届けを 見つめるそんな私に啓介はそっとスーツの ポケットからボールペンを取り出し微笑ん だどうしたボールペンならあるぞ印鑑が ないとか あちょっと待って離婚どういう 意味私を見下すような態度で啓介は胸 ポケットからタバコを取り出し火をつけ たお前はなんだこの旅館で働くようになっ てまるで魅力がない和服美人といえば 聞こえはいいが地味でつまらん退屈な女だ なとにかくつまらんお前はつまらんつまら ん つまらんて 何私が言葉につまらせて絶していると啓介 は近にあったパイプ椅子に腰を下ろして私 を見上げるような姿勢になっ たよく見るとスーツの袖からは私が見た ことのない高級そうな腕時計が覗いて いる私の視線に気づいたのか啓介は右手で 腕時計のバンドを撫でながら壁にかかった カレンダーに視を移し たこの旅館は売却 する私は耳を疑った先祖大々続いた死に 旅館 売却啓介は女将であるお母さんがいつまで も現場復帰できない状況ではいずれ経営 状態が破綻するかもしくは支配人である 啓介自身に多大な苦労が降りかかると断言 する今の状況を打開するにはこの旅館を 大きなホテルグループに売却し参加となり 経営権を渡してしまうのが最も効率的だと 説明すでにホテルグループとの話は進め てる最終的に俺は実質的に旅館業務に一切 の手を出さずに収入を得られるんだすごい だろうちょっと待ってせめてお母さんの 体調が良くなってから旅館についての話と かその婚の話とかをそれで思ったわけよ そんなすごい俺がなんでこんな地味女と 結婚生活しなくちゃいけないんだってそう 考えたらなんかだんだんイライラしてきて さ私の話など全く聞いていない啓介が私の 手にボールペンを無理やり握らせ強引に机 の前に立たせ た机の上に置いた離婚届けを指さし今すぐ かけよと耳元でさいた全身から鳥肌が立っ て思わず啓介を 突き飛ばす彼は私を下げんだ笑を浮かべて い たこの旅館の売上と従業員はもらっていく 待って冷静にせめてお母さんの具合が回復 して旅館の話し合いが住んでからその後で 私たちのことを話し合えない の時間稼ぎのつもりかまあいい今日は帰る よこの旅館をどうするかの決定権は俺に あるんだ し啓介は机の上に置かれた離婚届けを指で 数回叩くそれは私に書いておけよという ジェスチャーであったそれとこの旅館は 介護付き老人ホームじゃないんだ仕事が できないならどこか違う場所で寝泊まり しろって母さんに伝えろよ 啓介が事務所から出て行った後私は呆然と 立ち尽くしていた夢が現実かの区別がつか なくなるくらいに衝撃的な状況で理解が 追いつか ない部屋の扉が 開く私は啓介が戻ってきたのかと思い一瞬 体を硬直させたけど現れたのはお母さんで あっ た今朝までネタきり状態でパジャマを着て いたお母さんはいつも仕事できている無事 の着物に着替えて立って いるお母さんは微笑み方針している私の方 を抱くと静かにごめんなさいねと謝罪した さて私の出番だ ね今まで見たことのない上品でいたずら っぽい笑顔が目の前に広がって いる私より少し低い小柄なお母さんに 優しく頭を撫でられると不思議な気持ちに なるやがてお母さんは私の背中を軽く 叩きごめんなさい本当にと再び謝罪した実 は私の体調が悪いというのは嘘だった のへ 嘘なんでそんなこと を試すような真似したこと謝るわでも聞い て優香 さんお母さんは周囲に誰も聞いている人が いないことをよく確認してから小さな声で 今までの経緯を説明し始め た実は数ヶ月前から啓介が不審な動きをし ていることに気づいたお母さんはたまたま 啓介の外出の理由はこの旅館の競合企業で あるホテルグループの経営人らしき人と 頻繁に会うためだと耳にしたらしい競合 企業の役員と会うことが啓介にとってどの ような意味になるのかは分からなかったが 仮にお母さん自身が病気で床にふしている という状況での啓介を試してみたかったと 告白 する結果的に啓介は支配人としての業務も 放棄しほとんどの仕事を私に押しけるよう な形になり大きな負担をかけてしまった ことをお母さんは何度も深く謝罪してくれ たでもこれでようやく本当に守らなくては ならないものが見えてきました旅館の後継 としても家族としても裏切った前はあの子 に必ずけさせ ますそれから啓介は家にも戻ることもなく 何もない日々が続い た1ヶ月が経ち旅館の周りの雪も溶け 始める日課である玄関掃除をしている私は 何気なく渓流近くに視線を移しもしかし たらもう一度あの珍しい山セミという鳥が いないだろうかと 思うどこか遠くの方で私の知らない鳥の 鳴き声がするたびに自分の心の中が綺麗に なっていくような感覚化するのはきっと こういう場所で暮らす人の特権なのかも しれ ない私は最初に感じた不安はどこへやら この旅館が好きになってい た旅館のスタッフも女将であるお母さんも そしてここから見える景色全てが好き だ手に持った掃除用のたぼ機を強く握る の先坂を登ってくる見覚えのある 車乱暴な運転で駐車した車から降りてきた 啓介は開校1番においあれはどういうこと だと声を荒げた私は穏やかな声で事務所で 話し合いましょうと提案し啓介を案内 するさすがに啓介も他のお客様が旅館内に ちらほらといるので感情に任せてどなっ たりするようなことはなかったが事務所に 入った途端に大きな声で私を問いただした おい旅館を売却する話がなくなっちまっ てる何をしたん だお母さん啓介がどこの企業と売却の話を 進めるのか入念に調べてくれていたのだ から私は私でこの旅館の方向性を考えてみ たの 啓介が軽減そうな顔をする私は事務所の棚 に整理してあるファイルからいくつもの 資料をテーブルに並べた丁寧にまとめられ た資料には私たちの旅館の経営状態や具体 的な事業内容が記されているそして啓介が 売却を持ちかけていた大手ホテル企業と 両者が提携することでのメリットをプレゼ するための資料が分厚いになってい た売却ではなくあくまで定型という 形介はその資料の中の1枚契約書と書かれ た紙に目を 通すそそんなあんな大手企業と定型を組め たのか完全にうちの旅館にとっては大きな メリットじゃない か優さんはとても優秀な交渉人だったの よつ の間にかお母さんが事務所の壁に もたれかかって話を聞いて いる啓介は未だに契約書と資料を何度か 読み直し唇を噛ん だ啓介が売却を考えていた大手ホテル企業 には私とお母さんで共に出向いて事情を 説明し売却の話は向こうにしてもらってい たそれだけでなく旅館の強みや両者が提を するメリットをプレゼンしビジネス パートナーとなる話を つつける私が長年大手企業の マーケティング部で培ったスキルが生きた よう だ旅館での新しい取り組みとして前に渓流 近くで見た珍しい鳥である山セに感動して いた私はこの旅館周辺に野鳥が集う宿と いうコンセプトを目指すことにし たそれにはこののような未の地を鳥たちの 生体系に注意しながら整備計画を進行し なくてはいけないこの発想に至ったのは私 がお女将としての視点の中で発見したもの だ秘境の旅館に訪れる人の中に相ear鏡 を首に下げて宿泊する人が何人かい た理由を聞くとこのような人と離れた山奥 には多くの野鳥がおりバドウォングとして 最適なのだ と旅館の庭に水場と餌場の 設置相手は野鳥だろ餌なんて巻いてたら 確かに集まるだろうけどそれじゃ勝って いるのと同じじゃないか動物園でも開業 するつもりなのか よ餌は冬場限定よ鳥たちも冬は餌を探して 苦労するからね将来的には旅館周辺に 小さな身がなる植物を植えて植物の身とか 虫とかを利用して野鳥との強制関係を 気づこうと考えているのよしかしあまりに もトピな考えじゃないかうちは旅館だぞ そんな野鳥なんかを旅館のメイン コンセプトに変える なんてそこで啓介は口をつぐんだ私は もちろんお母さんですら冷たい目で啓介を 見ているからだ 散々今まで旅館の経営を面倒くがって売却 だなんだの騒いでおいてこっちが懸命に 考え抜いたアイデアにケチをつつけるとは 何こと か優香さんに失礼な態度を取ったらしい じゃないかあんたもうこの旅館にも居場所 なんてないから ねお母さんがそう啓介に言った後私も啓介 も黙り込んでしまう 壁にかけられた時計の病院が妙に響く啓介 は何も言わずただ長い時間資料を見つめて い たそして額に手を当てて床に座り込んで しまうなんてことをしてくれたんだ俺が どんな思いで売却を決めたと思ってる こんなさびれた旅館を継ぐなんて苦労する 未来しか見えないこんな長時間労働ばかり の職場は優香にだって苦をかけるに決まっ てるじゃない か 啓介今からでも間に合う旅館を 売ろう海外投資家に旅館を売却すればここ は外国人御用たしの旅館になるスタッフの ほとんどは英語を使えない状況じゃ売却後 はすぐに全員解雇される恐れもあるのよな 何そういうものか考えすぎじゃなく て啓介が怯えた表情でお母さんの方に視線 を移すお母さんは無表情のまま小さく頷き 私の考えを肯定した いや正直言うと買収後に全員解雇は言い すぎなのだけれど今の啓介にはこれくらい の刺激的な言葉の方が効果がありそう だ幼い頃はこで育ったようなものである 啓介にとって旅館のスタッフの中には親戚 のように付き合いの長い人もいるその人 たちに迷惑をかけたくないという気持ちも あるのかもしれ ないここは数百年も続いている死旅館これ からもずっと存続して欲しいと思ってるの 私の言を切りに事務所の扉が開いて スタッフが入ってきたそれほど広くはない 事務所内に旅館内のスタッフである中井や 調理師受付やドライバーなど旅館で働く 従業員が全員集まった今回の事情は全ての 従業員に報告してあるケスが支配人として ふさわしいか否かは分からないが彼がこの 旅館を自らの勝手な判断で手放そうとして いることは他の従業員にも到底許しがい ことだったらしい あるものは怒りをむき出しあるものは悲し そうな表情で啓介を 見つめるそれらの多くの人の熱い視線を 向けられ啓介はただうれて黙り込むしか なかったわかった分かったよこれからは俺 も支配人として頑張るよはい えっともう離婚届けは無事に提出してある んだけどな何ちょっと待て俺と離婚してる なら優香が旅館で働くっておかしな話だろ な お母さんついに話の滅びでも見つけたよう な感じで嬉しそうに半笑いで問い詰める 啓介にお母さんは着物の帯から1枚の写真 を 取り出す写真の中で啓介と派手なメイクを した若い女性が腕を組んで いる若い女の子に尻尾振ってつで借金して たみたいだねそれで旅館の売却と離婚を 急いでたんだろう知り合いに調査して もらった よ写真を握りしめうめき声のようなものを 口から漏らした啓介は両腕で頭を抱えて床 に倒れ込んで しまうちょっと待ってくれよ俺が間違っ てるのかよわかんねえ意味がわかんねえや 旅館の従業員の1人が部会者には帰って もらいましょうと言い数人で啓介を 抱き抱えて事務所から出ていっ た事務所に残った私とお母さんは顔を 見合わせ深くため息を同時につい た終わりました ねそうね改めて優香さんにはこの旅館の 女将として頑張ってもらいますよろしい ですね 私はお母さんに教わった女将としての所作 を思い出しながら静かな声で先月ながらと 深深と頭を下げるのであっ たそれから1年の月日が立とうとしている 私とお母さんが切り盛りする旅館は毎日 予約で満室になって いる介と離婚が成立した今となっては義母 という関係性ではないので今はもうくみ子 さんと呼んでいる私はこの旅館を死にと いう理由で常連客に愛されるだけでなく 新しい客層の獲得や顧客満足度の向上を常 に考えながら仕事に取り組んで いる実家を裏切った啓介は気さから地元に いられなくなり都内へと旅立ったようだ 共通の知人曰わく見知らぬ土地で日雇い 労働で食いついでいるようでまるで渡り鳥 のようだなと 思う啓介は啓介なりの人生を大切に送って ほしいと心から 思う次々と新しい旅館のイベントや計画を 立てつつも私が最も大事に思っていること は従業員もやりがいを持ち満足に働ける 旅館にということ義母であったくみ子さん もそれに賛同し私たちは本当の親子のよう に仲良く支え合えて いる現在は提携しているホテルに外国人 観光客向けのノウハウを教わっており新た な取り組みを任せてもらっている私は今後 の旅館の姿をとても楽しみにして いる雪解が始まりもう春が近づいている 渓流の先にある山の向こう側に自生して いる背の低い桜がもうすぐ先出しそうで あるお客様の中に相ear鏡を首に下げて いる方がいて何気なくバードウォッチング の話になったその時私が旅館の近くで山 セミを見たという話をするとそれはすごい と嬉しそうに微笑んでくれ た時々仕事の休憩時間に私は渓流のそばに 座り自然の吹きを感じながら静かに時間を 過ごした青々とした木々の合間から1話の 美しい白黒の鳥が飛び出し私の視界を 横切っていく空想をしながら長い間水の 流れを眺めて いる山々から溶け出した雪水と脇によって 形成された渓流はどこまでも綺麗でいつ までも流れ続ける永遠のようにも感じ たあの日偶然に見た山の姿をもう2度と私 は見ることはなかっ た女将さんちょっと手を貸して ください旅館の入り口で新人の中が困惑し た様子で私を呼んでいる私は立ち上がりお 尻を軽く叩くと小走で旅館へと戻っていく ことにし た私の背後で山がさそと渓流を飛行して いくあの子にどう伝えたらいいの か私はまだ大学生である息子の幸月に負担 をかけたくなかったが意思から嫁1年を 宣告されてしまった以上ありのままを 伝えるしかないと思っ たあんたに大事な話があるんだ けど何どうした のあのね お母さんこの前のが検身で引っかかって 今日病院へ行ってきたんだけど ねそして私は自分の体が乳がに犯されてい てこのまま何もしなければ1年と宣告され た事実を打ち明け た重くなりかけた空気を振り払うかのよう に私はすぐに笑顔を作っ てあんたは何も気にすることないのよ私は これまで通り仕事もするし通院は増え ちゃうけどあんたの邪魔はしない つもり冗談じゃ ない黙って聞いていたが突然怒号を発し たマジめんどくせえってことはいずれは俺 があんたの身の周りの世話をしなくちゃ いけないってこと だろこ こすこれまで1度も反抗したことがない こすのあまりにも意外すぎる反応に私は 返す言葉を失った 介護とかマジ無理出てく わお願いだから話だけでも聞い て翌日私が仕事を終えて帰宅すると幸介の 荷物は全て消えてい た茶台の上には通の置手紙が残っていて これからは自分のためにとだけ書き記され てい たこすの心はとうとう爆発してしまったの だ夫を病気でなくして以来あの子は私に気 を使って自分のことを後回しにしてきた 本当は他の友達と同じようにもっと楽しい 青春を王化したかったはずなの にそれを私が邪魔してしまったのかもしれ ないスマホに登録された介の連絡先をを目 で追ってだめだめ私はまた同じ誤ちを 繰り返すつもりな の息子に電話をかけようとする弱い自分を 厳しく叱りつけ た私の名前は和田とみ50代私は学生の頃 3つ年上の幼馴染みの国と交際し卒業と 同時に結婚した国明は小さな印刷工場で 働いていて2人で生活するには十分な収入 を得ていたが間もなくして長男幸介が 生まれるとそれだけでは難しいと考える ようになり私は家計を助けるためにパート を始めることにし た不景気に加え印刷物の需要が減っていた こともあって 工場の業績は芳ばしくなかったようだ けれどそれでも国明は私と幸介を守るため に泣き言1つ言わず朝から夕方まで必死で 働いてくれ た時には夜遅くになって帰宅しては取引先 から押し付けられる無理難題に愚痴を こぼしてしまうこともあったがの無垢な 寝顔を見るたび に俺もまだまだ負けていられないな明日も 頑張る ぞと自分に言い聞かせて笑顔を見せるの だっ た幸介が小学生になった頃から国明は ため息をつくことが多くなりやがて食事を 残すようになっ た国明は学生時代にラグビーをやっていた ので体つきはがっしりしていて人一倍よく 食べてたけれどある日久々に訪ねてきた遊 が彼を見てあれ痩せ たと驚くほど国明の体はみるみる小さく なり表情もひどくやつれていくようになっ てい たラガーマンのおかはすっかり消えて しまい私も夫を知る仲間たちも彼の体調を 不安しするようになった ごそさん ああ今日はもういい よご飯もおかずも半分も食べてないじゃ ない一度病院で見てもらった方がいいん じゃ ない今日も朝から営業があるんだ最近また 取引先が潰れてしまってねでもお前たちに はできるだけ苦労はかけさせ と国は力なく笑って答え た無理しないでね私もパート増やす わお前の方こそ無理するなよ家事に育児に 大変なん だろたまにはこすと2人でどこか遊びに 行ってきたらいい よ国は本当は自分が大変な時でも常に私と のことを1番に考えてくれる優しい人だっ たすが中学生の時国明が仕事中に倒れたと 職場から知らせを受けて私と幸介は急いで 搬送先の病院へと向かっ た慢性骨性発見病ですかなり無理をしてい たと思われ ます意にそう言われて私は悔しさな 唇を噛みしめ た体調が悪そうにしていたのは以前から 感じていたはずなのにあの人の苦しみに 気づいてやることができなかっ た病院で見てもらうことをもっと強く進め ていればよかったの ださらに医師はとても言いづらそうに表情 を曇らせ てもう少し発見が早ければ治療もあったの ですが今の段階では大変厳しい状況と言わ ざるを得ませんこのままだともって3 ヶ月そんなにだってあの人はまだ働き盛り なんですよ息子だってまだ中学生でこれ からまだまだ元気でいてもらわないといけ ない人なんです困るんですよ 私は感情的になって意思にすがったがそれ を幸介がやめなよと止め たそう幸介のゆとりだ意志に八つ当たりし ても仕方が ないこんな時にも親である私より冷静に 対処できる息子の成長ぶりを私は意外な 場面で気づくことができ た国明の病室に入ると彼はすっかり 痩せ細った手をあげ て来てくれたのか悪い な何言ってるのよ当たり前じゃない家族な んだ から幸介も本当にすまない今日は学校が あったんだろわざわざ相待させるような ことをし てバカだな俺のことよりお父さんは自分の 体のことだけを心配して よそう言ってこすは力なく笑って国明の 弱々しい手をつかんだその日以来私は毎朝 国明の見舞いに行って身の回りの世話を 一通り済ませるとそれからパート先の スーパーに向かいパートが終わればまた 病院へ向かうことを繰り返すようになった こすも私1人に負担をかけたくないと思っ たのか学校が終わると積極的に料理をし たり洗濯をするようになっ たあんた部活あったんじゃない のやめたよちょうど大きな大会も終わった ところだし ね自分の息子ながら本当にいい子に育って くれたと私は誇らしかった 医師に米名3ヶ月を宣告されてから半年後 国明は治療の買も虚しく静かに息を 引き取っ たあの人は私たちにとってヒーローでした 私たちのために精一杯生きてくれたと思い ます私はできるだけ笑顔で国明を見送って やろうと思っていたけれど出の時どうして も溢れ出る涙を抑えることができなかっ た無理しないでよ お母さんこすはそう言って泣き崩れる私の 方をそっと優しく撫でてくれ た夫の葬儀が終わってしばらく経つと私は 泣くのをやめ たこれからは私がお父さんの文まで しっかり働いてあの面倒を見るからあなた は何も心配しないでとにかく勉強に励み なさい俺考えたんだけど中学を卒業したら 仕事に着くよ働いてお母さんを助け たい親を気遣う息子に私は苦笑しながら 話し た実はあんたの将来のためと思ってこれ までくさん学費を貯めていたのよお父さん が入院した時もそのお金だけは絶対に手を つつけるなってお父さんに叱られちゃった わ本当なの俺本当に進学していい のまだまだ子供のくせに1人前みたいな こと言ってんじゃないよ私が何年あんたの お母さんやってきたと思ってるの そのためにパートだって始めたんじゃない のそっか ありがとう本音を言えば決して楽な生活は できなかったけれど幸介は私に気を使って 納得するそぶりを見せてくれ た私はパートから社員に採用された勤め先 であるスーパーの店長が私たち家族をに 本部に合ってくれた らしい以前住んでいた住居も売却し私とは 6畳ひの小さなアパートに引っ越し た高校に進学した幸介は友達から部活に 入ることを進められても断って学校が 終わるとまっすぐ 帰宅仕事で帰りが遅い私に変わって夕ご飯 の支度をし たごめんなさいねあんたも本当は部活を やりたいんじゃない の別にいいのにそんなに気を使わないでよ 俺はただ自分が料理を覚えたいからそうし ているだけだ よこすはいつもそう言ってにっこり笑って 答えるがその笑顔を見るたびに私は息子に 負担をしいてしまっているのではないかと 心苦しかっ た俺にははもう母さんしか家族はいないん だからねあまり無理しないで よ自分のことより私のことを気遣って くれる 幸介決して贅沢できるような環境では なかったけれど私たちは2人で仲良く幸せ に暮らしてい た大学はどこにするか決め た俺大学には行かないよ業したら就職 するって決めた進路の先生とも相談し てるそう言って力なく笑ったこすだった がある日テレビで大学のオープン キャンパスのCMが流れているのをこすは 食い入るように見つめてい たねえこす前にも言ったけどあんたが進学 できるだけの学費は用意できているわよ 高校だけじゃなくて大学にも行っていいの よこすは私と目を合わせないように笑っ た本当は大変なんでしょ俺も子供じゃない からそれくらいわかる よ私はそんなことないと反論しかけたが それより先に介 が分かったよ大学に挑戦してみるだけど できるだけ母さんに迷惑をかけないように する自分にどこまでできるか分からない けどやるだけやってみる よといつになく真剣なまなざしで言った その日から幸介は猛勉強に打ち込むように なった私が帰宅するとすでに夕ご飯の支度 は進んでいては部屋の片隅でダンボール箱 を机に勉強 中スープ温める よそう言って立ち上がろうとするコースを 私はいいからと止めて自分でやるから あんたは勉強続け なさい母さんだって仕事で疲れてるんだろ だったら休んでよ俺もちょうど休憩しよう と思っていたところだ しも勉強の末介は見事念願の国立大学へ 進学を果たしたので あるおめでとう国立に合格なんてやっぱり 介は すごいこの大学なら学費も免除だからさ 母さんの負担も少しは減ると思うん だ自宅から大学までは移動距離が長かった がそれでも は1人ぐらをするにしても学生料を利用 するにしてもお金がもったい ないと言って早朝から起き出して自転車 通学を始めたそれだけでも大変なはずなの に幸介は私が知らないうちにアルバイト まで始めていたのだ私がその事実に気づい たのはだいぶ後になってからだっ たあまり無理するんじゃないよ 平気だよ俺はただ自分のやりたいことを やりたいん だ目の色を輝かせて言う息子に私もそれ 以上返す言葉はなかったきっと幸月にも夢 や目標があるの だろうしかし家庭の経済的な事情からそれ を言い出せないままこすはここまで来て しまっ たにやりたいことがあるのなら私にはそれ を止める権利などないの だ私はそれ以上何も言わずに息子を見守る ことにしたそんなこすが3年生になった頃 から顔色が悪くなっ た朝起きる時も深いため息をつくように なり帰宅してもご飯はいらないと言って すぐに布団を敷いて横になって しまうそれでもバイトだけはけていたよう だったが私はだんだん不安になっ て最近なんだか疲れてるんじゃない顔色が とても悪いわよバイト少しくらい休めない の平気だよ最近は確かに人手不足で大変だ けど母さんが気にすることじゃない よ私が声をかけるたに介はそうやって答え た そんな日々が続いていたある日のこと私の 元に1通の封書が届いたそれは毎年受けて いる地域住民を対象にしたが検診の結果 通知だった入が検査の項目に要検査の文字 を見て私は恐怖に襲われて しまう大丈夫よねどうせ再検査してもただ の町よ ね以前パート仲間の1人に入が検査で 引っかかった人がいてちょっとした騒ぎに なったが専門病院で改めて検査したところ が細胞は確認されなかったということが あったの だ私の場合もきっとそんな感じで何事も なく笑い話として済まされるに違い ない恐怖をごまかしながら私はは専門病院 で精密検査を受けることにしたその結果私 は一気に絶望のふへと突き落とされること になっ た間違いありませんニガです ねと医師ははっきりとした口調で言っ た幸い発見が早かったので今のうちに適切 な治療を進めていけ ば私はは自分の体のことよりも仕事のこと そして何より幸介のことを考え た幸介が大学を卒業して就職を決めるまで は今の生活を辞めるわけにはいか ない治療をできるだけ先延ばしにするわけ にはいきませんか今は仕事を辞めるわけに はいかないんです私にも生活があります から しかしですね和田さん今のうちに治療して おかないとが細胞はいずれ肺や骨にまで 定員して手遅れになってしまうこともあり 得るんですよ最悪嫁1年ということ も嫁1 年その言葉の残酷さに私は心も体も震えた 意は怖い顔を見せていったが決して脅しで 言っているように思えなかっ た今日のところは考えさせてくださいまず は家族と話し合って今後どうするべきか 決め ます医師は深刻そうな顔でため息をつく とわかりましたですが結論を出すのは できるだけ早めにお願いしますよ 私は意思として目の前の救えるはずの命を 失いたくないどうかご理解いただき たいそう言って真剣に話してくれる意志に 私はふぶかと頭を下げて一旦病院を後にし た帰宅すると私の気持ちは重い岩に今にも 押しつぶされてしまいそうだっ たあの子にどう伝えたらいいの か幸介はこの頃かなり疲れているらしく 歩くだけでも苦しそうに見えるそんなこす に私はこれ以上負担をかけたくなかっ たしかし今はありのままを伝えるしかなさ そうだと私は腹をくった幸介はこの日も ひどく疲れた表情で帰宅し たそのまま布団をて倒れ込んだすに私は そのまま寝かせてやりたい気持ちをぐっと こらえてあんたに大事な話があるんだけど と勇気を振り絞って話を切り出したいつも と異なる雰囲気を感じ取ったのかこすは すぐに起き上がっ た何どうした のあのね母さんこの前の元検診で 引っかかって今日病院に行ってきたんだ けど ねそして私は自分の体が乳がに犯されてい て嫁1年と宣告された事実を打ち明け た重くなりかけた空気を振り払うかのよう に私はすぐにパッと明るい笑顔を作っ てあでもあんたは何も気にすることないの よはこれまで通り仕事もするし通院は増え ちゃうけどあんたの邪魔はしないつもりだ からあんたも安心してこれまで 通り冗談じゃ ないそれまで黙って聞いていたこすが突然 怒を発し たガン 通院マジめんどくせえってことはいずれは 俺がの身の周りの世話をしなくちゃいけ なくな るってことだろ父さんの時みたいに あマジめんど くせえこ こすそれまで1度も反抗的な態度を見せて こなかった幸介のあまりにも意外すぎる 反応に私は返す言葉を失っ たそのうち母さんは1人で動くのもきつく なるかもしれないんだろそうなったら介護 するのは俺冗談じゃない介護とかマジ無理 出てく わあんたに負担をかけるつもりはないよお 願いだから話だけでも聞い てこすは話を一方的に断ち切ってしまうと 再び横になり布団を頭からかぶったまま私 が何を言っても顔を出してくれなかった もう寝てしまったのかあるいは寝たふりを しているだけなのかは分からなかったが私 はこれ以上何を言っても無駄だと諦める しかなかっ た ただいまこす帰ってる の翌日仕事を終えて帰宅すると畳魔がいつ もと比べて明らかに広く感じ たの荷物は全て消えていたのだ茶台の上に は一通の置手紙が残されていてこれからは 自分のためにとだけ書き記されてい たこれからは自分のため に私はそこに書かれた文章を何度も口に 出して読み返した幸介の心はとうとう爆発 してしまったの だ長年あの子は私に気を使って自分のこと を後回しにしてきた本当は他の友達と同じ ようにもっと楽しく青春を王化したかった はずなの に幸介の苦しみ背負った荷物の重みに私は 母親のくせに気づいてやれなかったいや 本当は気づいていたはずなのにあの子の 優しさに甘えてしまったのかもしれない そんな私にこれ以上介を頼る資格なんて ない私は鏡に移る自分の顔を見つめ ながらあんたは母親 失格辛く悲しい気持ちに蓋をしながら私は 自分を激しく罵倒し たそうすることがまるで息子に対する 罪滅ぼしであるかのように 幸介がいない中私はたった1人で投票する ことになっ たもちろんこすのことを思わない日は1日 だってなかっ たそれでも私はあの子がようやくこんな ダメな母親から解放されて自由になったん だあの子にはあの子のやりたいことが 見つかったんだと自分に言い聞かせた スマホに登録され の連絡先を目で追ってはだめだめ私はまた 同じ誤ちを繰り返すつもりな の息子に電話をかけようとする自分を 激しく叱り飛ばし た治療に専念するにあたって私は仕事を 辞めることにし た本当は幸介が大学を卒業するまでは仕事 を続けながら通院という形で治療を続けて いくつもりだったけれどその幸介はもうい ない自分のやりたいことを見つけたの ね不思議なことにそう思うと私はもう少し 自分の人生を生きてみたいと考えるように なっ たこすがこの先どんな人生を歩んでいくの かこの目で見てみたいと思ったの だ仕事をやめてこれまでに蓄えたわずかな 貯金を取り崩し保険や国の制度をうまく 利用しながらが細胞の摘出手術を行い放射 線治療を受け たゴールの見えない戦いに時にはくじけ そうになりながらも医師や看護師患者仲間 それに以前私が務めていた職場の仲間たち の応援もあって私は前を向い 病気と向き合うことができ たおはようございます和田さん今日も調子 が良さそうです ね殻になった食事のプレートを見て担当の 看護師がニコリと微笑ん だおかげ様で最近は病院の味にも慣れ ちゃってそれにお腹もすぐ空いてしまうん です よ順調に回復している証拠です [音楽] すっかり仲良くなった看護師とそんな やり取りをするのが私の新しい日常となっ てい た余名1年の宣告から早くも3 年今回も再発はなしよかったです ね担当医からその一言を聞くたびに私は 取りしたい気持ちになっ たその後ご自宅でも変化はありません 何かあればすぐに連絡してください ねすでに私は退院していたが月に1度の 定期検診は受ける必要があったバスの車窓 を流れる町の景色人々の会話と笑い合う声 顔見知りとの 挨拶そういう何気ない日常に触れていると 通院の煩わしさも私にとっては喜びに 等しかった 幸介はあの子は今頃どこでどんな人生を 歩んでいるの だろう昔から勉強ができてしっかり者で何 でも自分でできてしまうような子供だっ た大学を卒業して今頃は大きな会社で重要 な仕事を任されているかもしれ ない彼女はできたのだろうかあるいは結婚 して子供だっているかもしれない3年前に 家を出たまま私の元へ帰ってくることは なかったけれど私は今でも幸介が幸せで あって欲しいと願ってい たそんなある日定期検診を終えて帰宅する と部屋の前に見知らぬ若い女性の姿があっ た私を見るなり慌てて髪型を整えて直立 不動の姿勢で辞儀した あの和田孝介さんのお母さんで いらっしゃいますね え彼女の口から思いがけない名前が 飛び出して私は一瞬時間が止まったような 気がし た申し遅れました私大学時代からこすさん とお付き合いさせていただいている川田 まかと言います 幸介のそうでした か息子の交際相手と知って私はどう対処し ていいか困惑し たとりあえず上がってと言っても狭すぎて びっくりしちゃった でしょ私は川田マリカを自宅にあげること にした彼女には息子のことで聞いてみたい ことがたくさんあった あの子は元気今は何をやっている の真っ先に私の口をついて出た質問は幸介 の現状だったしかしマリカはその問いかけ にはすぐに答えなかっ たお母さんはガを患ったとこすさんに聞き ましたその後体調はいかがです かご覧の通り今はなんともないわよ もちろん通院は必要だけど ねそうですかよかっ たそう言ってマリカは胸を撫で下ろした心 の底から安心する彼女を見てこすはいい人 と巡り合えたのだと私は確信し たそれでこは 元気私は同じ質問をもう1度し たマリカはしばらく言い淀んでいたが やがて思い口を開い たこすさんは今入院してい ます入院ってあの子どこか具合でも悪い の私は驚いてマリカを問い詰め た今から3年前のことでしたバイトを終え た後突然隊長不良を訴えて病院へ行って 検査したら慢性骨水性白血病と診断され まし た慢性骨水性白血 病そのいしい病名に私は胸が押しつぶされ そうな思いがしたまさか介まで国明と同じ 病魔に犯されていた なんてさんはずっと悩んでいましたこの ことをお母さんに打ち明けていいものか 余計な心配をかけさせてしまうのではない か と余計な心配だなんて何よそれたった1人 の家族なのよそんな大事なこと母親である 私にちゃんと伝えるべき でしょうそうですですから彼と私は 話し合ってそれでお母さんにお伝えしよう としていただったんですお母さんがご病気 になられたの は えあの 時3年前の幸介が私に反発したあの日の 記憶が鮮明に蘇っ たごめんなさいお母さんお母さんを責める つもりはなかったんですただ事実をお伝え したく ていいのよさんが謝る必要なんてないの よあの日幸介は確かに顔色が悪かっ た本人は何も言わなかったけれど本当は 言おうとしていたのではないか言おうとし てだけど私に心配させまいとギリギリまで 言うことをためらっていたのではなかった かそんな時私自身が嫁1年であることを 告白してしまった その瞬間こすの中で答えは決まってしまっ たのだ私には真実を伝えない とこすさんが言ってましたもし自分が病気 のことを母親に伝えてしまったらあの人は きっと自分のことより俺のことを優先して しまうだろう とさんはただあなたに少しでも長く生きて と願っていたんです自分のことに構わず お母さんが治療に専念してくれることを何 よりも強く望んでいたん ですだからあの時介はわざと自分から私を 突き放すような言葉を言い放ったの だ幸介は私との会話を中断して布団で顔を 覆っていたけれどあの時本当は泣いていた のかもしれない 泣いていたのに泣いた顔を見せまいと布団 で覆い隠して必死でネタ振りをしていたの かもしれ ない幸介が最後に書き残したこれからは 自分のためにのメッセージが今になって 180度逆の意味として私の胸に押し迫っ てき たあのメッセージはが私から離れて自分の 人生を生きる意味だとずっと思い込んでい たけれどそうではなかった本当の意味は私 が自分自身のために生きて欲しいという あの子なりの優しさだったの だ息子の真意を組みとってやれなかった 悔しさと母親としての不甲斐な自分への 怒りで私の心は満ち溢れてい た知らぬ間に感情が顔に現れていたのかも しれない そのお顔ですきっとお母さんはそうやって 自分自身を責めてしまうだからこすさんは 本当のことを伝えられなかったのではない でしょう か私は一度新呼吸してあれくるう気持ちを 落ち着かせ たごめんなさいねお茶も出さず に涙を拭いながら立ち上がり頭と気持ちを 整理する 家を出た後こすさんは3年間私のアパート で一緒に住んでいまし たそうそれであの子は大丈夫なの回復に 向かっている のお茶を出しながら尋ねるとまかは答え づらそう にこすさんすぐには入院することを拒否し たんですえどうして さんはこの3年間ずっと通院しながら バイトにあけくれていましたそこから私へ の生活費お母さんへの治療費そしてわずか に残ったお金を自分の治療費に当てていた ん ですそう言ってマリカは茶ブートを 差し出し たこすさんからお預かりしたものです お母さんの治療費に使って欲しいと 私のため にこすは以前と少しも変わらずあの頃の 優しい息子のままだったの だでも体は悲鳴を上げていたんです先月の ことでしたこすさんが倒れて入院すること になってしまったん ですバカな 子バカな子本当にバカな 子そう言って泣き叫ぶ私の背後にマリカは 回り込むと何も言わずただそっと優しく さってくれ たまかさん教えてあの子は今どこの病院に 入院している のそれ はあの子のことだからきっとあなたにも 口止めされているのでしょうけれどでも 教えて私も知りたいの私はもう元気だから これからは私があの子の助けになりたい のマリカはふーっと息を吐いてそれから胃 を消したよう にわかりました私はこれからこすさんを 見舞いに行こうと思っていましたから お母さんもいらして くださいマリカに導かれて私は幸介が入院 する病院へと向かった3年ぶりに会う息子 はすっかり痩せこけ 私は待たしても涙が止まらなくなっ た こすこんなになるまで気づいてあげられ なくてごめん ねこすは私の隣にいるマリカを怖い顔で 睨みつけ たどうして教えたんだと責めようとしたが すぐにカの悲しそうな目に気づいて お前は悪くない悪いのはお前に辛い役目を しいた俺の方 だ母さんもごめんよ今まで病気のこと黙っ ていて本当は俺も母さんに会いたかっただ けど言い出せなかっ た私が心配しないように気を使ってくれた んだろあんたは昔から優しい子だったから ねでも安心しなさい私はもう大丈夫癌の 再発も今のところ見られないっ てそうそれを聞いて俺も安心した よそう言って公介が私に3年ぶりの笑顔を 見せたしばらくすると意志がやってきて ちょっとよろしいですかと私に声をかけ た君はこの3年か治療費が払えないことを 理由に入院を拒みバイトを続けていたよう ですですがそれも限界に来て私の判断で 強制入院させることにしまし たありがとうござい ますただ入院中の今でも費用ばかり気にし て最低限の治療しか望んでいない状況です て患者本人の希望でもある 私としてもそれ以上のこと はあの子の父親も同じ慢性骨性発見病でし た早めに治療を受けていれば助かったかも しれませんなのに夫は家族を優先して自分 のことは後回し で夫に続いて息子までも失いたくありませ ん治療費は私がなんとかしますですから どう あの子を助けてやってくださいお願いし ます幸介の治療費のことで私には心当たり があっ た国明の保険は幸介の学費に当てようと 思っていたが幸介は自力で学費が免除さ れる大学に通学したのでそれをそのまま 幸介の治療費に当てることにしたの だわかりましたこちらも全力を尽くします 医師の力強い言葉に私の心は震え た国お願いあの子を助け て私は天国で見守ってくれているであろう なき夫に心の中で呼びかけ た幸介も治療に前向きになり本格的な薬物 治療が始まっ たお母さんは休んでください ずっと寝ていませんよ ね ありがとう後はお願い ね私とまかは交代しながらこすの身の回り の世話に徹したそんなある日まかがチート を差し出し てこすさんから預かっていたお母さんの 生活費ですこれをどう かブートを受け取って中身を確認した私は 息子の優しさを嬉しく思いつつも真面目で 頑固な性格を腹立たしく思っ たこれはあなたが使っ て私が受け取りを拒否するとマリカは少し 困惑する表情を浮かべたがすぐに分かり ましたと答えた治療費を気にする必要が なくなった高助は順調に回復へと向かい その後の経過観察も良行 そして数ヶ月後無事に退院することができ た俺自分の人生をもう一度やり直すよ遅れ てしまった分を取り戻さないと ねあなたなら大丈夫 よ私の言葉通り幸介は大学に復学すると先 に就職していたマリカの経済的な支援も あって順調に卒業することができた 就職を果たした幸介は私とマリカに例を 言う とようやく始まるんだなとこれから訪れる 明るい未来に気合いを限らせ た幸介の真面目な人柄と周りに対するきり の良さは車内でも高く評価され入社から わずか数年でトト拍子に課長クラスに 昇進生活が安定したことを確信した孝介は 意を決してマリカに結婚を申し込み彼女も それを受け入れ たまかさんこれを結婚式の費用に当て なさいそう言って私はチブとを手渡し た幸介が私の治療費としてくれたものだ けど私は結局使わなかったから これをそのままあなたたちのために使っ ちゃい なさいありがとうございます お母さんそれからさらに数年の歳月が流れ た私と幸介は現在も定期検診に通っている ものの幸いなことに2人とも再発もなく 元気に過ごして いるは部長に昇進し偽世帯住宅を立てる までにな 夢が叶ったわねそう言ってまかがこすと共 に喜びを分かち合った ああこんな大きな家に母さんを住まわせて あげたいと中学の時からずっと思っていた から ね介はそう言うとマリカの大きくなった お腹を優しくなれ ながらこの子のためにも俺たち自身が もっと幸せにならないと なそう ね気がつくと私の目からは大粒の涙が 流れ落ちていた年のせいかこの頃どうにも 涙もろくなっているよう だまさか幸介の中学時代の夢が私とこんな 大きな家に住むことだった なんてさあお夕飯の ス泣いているとを悟られまいと私はいつも 以上に大きな声を出し たあお母さん私もお手伝いし ますマリカが慌てて私の跡を追ってくる日 に日に頼もしくなっていく息子夫婦を私は いつもそばで微笑ましく見守って いる え娘がなくなった私の元にに1本の電話が かかってきたのは娘であるさの子供を 預かっている時だった警察な話によるとさ とその夫である洋平は交差点横断中に跳ね られまもなく息を引き取ったのだそう突然 の宣告に頭の中が真っ白になる同機が 激しく立ちくらみがしたつい数時間前まで 私たちと笑っていた娘がすぐに確認をしに 行きそこから先は悲しむ暇もないまま色々 な手続きに追われたそんな中さの子供で あるみつ子の今後について傭兵の両親で ある翔子と行お話し合う機会が 訪れる残されたさと傭兵の子供について 翔子と一行に訪ねると翔子の口から信じ られない言葉が出てき たガはどうするかって面倒だし施設にでも 入れれ は私は意味を疑った信じられないその 気持ちが心の中を尽くすさの生前みつ子で ある孫たちは義実家の元で暮らしていたの だたまにしか会っていなかった私たち夫婦 よりずっと孫に対する思い入れは深いはず なのに可愛い孫の将来が心配じゃないの あんなに可愛がっていたの にもういいですと洋平君の子供は私たち 夫婦が大切に育てますそれから20年近く の時が流れた色々な苦難はあったが立派な 大人に3人とも育ってくれたことを私は 誇りに思うさと洋平を失った悲しみは忘れ ないがそれでも2人の分まで幸せに生きて いこうと思っていたある日家のチャイムが 突然なった玄関を開けるとそこにいるのは 何年ぶりかのになる子と意ではないか驚く 私に夢もくれず証拠と伊は部屋の中に入り みつごと対面するそして信じられない言葉 を放っ たあなたたちまた私と一緒に暮らさ ない私は水の替えで夫のはとは高校の同級 生でその時に交際を始め社会人になって から結婚した27歳になると私たちは子供 を授かった名前はさ1人娘だったので全 愛情をさに注い出しさも明るく元気な子に 育ってくれたそんなさが短大生になり しばらくした頃当時付き合っていたさの1 つ上の傭兵と一緒に話があると言ってきた あお母さん今月末の日曜日開けておいて もらいたいんだ お父さんも一緒にちょっと話したいことが あってね洋平と一緒になんだけどえ今月末 そうねお父さんの仕事は休みだから大丈夫 だけど 何うんその時にきちんと話すよ悪いけど その日は開けておいてねお父さんにも釣り に行かないように言っておいて一体どうし たのかとさに問が当日までは言えないとの こと私は色々な思いを巡らせたまま当日を 迎えたそして当日話し合いは傭兵の実家だ という桜に私はなんとなく予想がついた なぜなら両家が集まって話をする機会など そう多くはないから傭兵のご両親に会うの は初めてだったので緊張を隠せないまま 洋兵の家へ 向かう初めまして 傭兵の母ですどうぞこちら へ初めましてお邪魔します手迎えてくれた のは傭兵の母である翔子だ翔子の欲のない 声に私の緊張はさらに高まるどうしても 歓迎されているようには見えなかった家へ 入るとすでに洋平の父と洋平は畳めに座っ ておりやはりどこか不穏な空気が漂って いる緊張したまま私たちも傭兵の家族の前 に腰を下ろし2人の話を聞く姿勢を整えた そしてゆっくりと口を開いたのは傭兵だっ たさとの間に子供ができました突然のこと で申し訳なく思っていますですがどうか どうか彼女との結婚そして子供を産むこと を認めていただきたい です傭兵は緊張しながらもしっかりと 私たち親の顔を見て告げたまだ結婚前で しかも2人とも学生というみだ反対される というのが分かっているのかその声は少し 震えていた傭兵な話が終わった後誰も話す ことはなく静かな時が続く意を決して私は このまま出産することについて心配なこと を伝え た子供を産むってそれがどういうことか 分かっているの学校はどうやって生活する つもりなのよ仕事だってしたことないのに あなたが思う以上にそれに続くように傭兵 の両親である翔子と育雄もまだ2人には 早いと反対をしたふざけないでちょうだい あんたたちまだ子供の分際で結婚いや 赤ちゃんだって誰のおかげで大学に行ける と思っているんだこの服も が怒涛のように浴びせられる言葉しかしさ と傭兵の決意は思ったよりもずっと固く何 を言っても産むことについての意見は 変わらなかったしばらく話し合いが続き 再びさと傭兵に頭を下げ られるどうかお願いします2人で何度も 話し合ってどんな大変な時も乗り越え ようって約束したんですお願いし ますさの消え入りそうな声を聞き私の今中 にも変化が現れるさは昔から物分かりの 良い子でわがままなど言われた覚えがない ほどだそれが今さは初めて自分の意思で 私たちに必死に思いを伝えてくれている 最初は反対していた私も話し合ううちに 2人の覚悟が十分に見えたまだ少し不安は がさが決めたことならと出産結婚について 賛成することにした私の意見にさはほっと した表情を見せたが傭兵の両親はカに賛成 しようとし ないどうしても認めてくれないのなら 母さん父さんとは縁を切るよそうしたら 迷惑かからない でしょこれ以上話し合いをしても平行線を たどったままだと感じ取ったのか傭兵は 静かにそう告げ たよ洋平君それはちょっと飛躍しすぎじゃ ないかな冷静になろう私はぎょっとして 傭兵に優しく考え直すように説得 する勝手なこと言ってるのは承知してい ますでもこれしか方法がないの なら縁を切るという言葉に小子と行は立ち しばらく考えているようだ少し2人で相談 したい と翔子と育雄は場所を変える何やら こそこそとこちらを見ながら小声で話して いるのが視界の端に移る少しした後勝子と 育雄は顔を合わせにやりと笑った後再び 私たちの元へと戻ってきたそして2人が 出した結果は条件付きで出産結婚を認める というものだったまずは出産結婚を認めて くれるということにほっとしたのもつの 条件付きという言葉に証拠と育以外の顔が ばるその条件というのはまずさと傭兵は 傭兵の実家で同居することその際さの両親 である私たちは翔子と育夫にさの生活費を 渡すということだったまだ混然で 1人暮らしもしたことがないさがいきなり 義母と 同居なに 不満でもあるもしこの条件が飲めないの なら私たちは出産も結婚も認めないわ もちろん傭兵と縁を切ることも断固拒否し ますどうするさ さんまるで詰めよるような証拠の言い方に さは俯いてしまっ たわかりました認めてくださりありがとう ございますさとはしばらく考えたとその 条件を飲んだ不安そうなさの表情に私も 少し悲しくなる私の不安が消えることは なかったが優しくさに寄り添う傭兵を見て しばらく2人を見守ろうと決めたさと傭兵 はそのまますぐに大学を中退する手続きを 取ることとなるそして子供が生まれてから の整形を立てるためは夫の知り合いの会社 で働きはになる証拠の元で内職家事を 手伝うこととなった社会人経験がなかった 傭兵に知り合いの会社を紹介した夫は最初 心配そうに何度も知り合いに様子はどうか と尋ねたそうだだが心配する夫の予想に 反して傭兵の会社での評判はとても良かっ たその後も洋平君はよく働いてくれる みたいでね僕も鼻が高いよ夫がにそう話す くらい兵は金兵に働き真面目にお金を貯め ているようだ最初は不安が大きかった 私たちもどんどんさと傭兵について安心感 が生まれるようになっていたそして時は 流れさは無事みつ子を出産することができ た最初みつ子と聞いた時はとても驚き何度 もさに間違いじゃないか聞き直したのを今 でも鮮明に覚えている私の周りにはみつを 産んだ知り合いいないし何より多妊娠は 単体妊娠に比べてリスクが高いと聞く そんな中無事に生まれてくれるのか ドキドキする日々が続いたがみつ子は スクスクとさのお腹の中で成長してくれた そうして生まれてきた子供たちはとても 可愛く目に入れても痛くないとはこういう ことかと実感するまず1番初めに生まれて きたのは七唯一の女の子だ生まれてすぐに 目はぱっちり2えとても愛らしい 女の子次は強しセジは1番小さく生まれた ので強く丈夫に育ってほしいと願いを込め て強しと名付けたそうだ最後は大使ミルク を飲む量が一番多くさはこの子たましいと 感じたらしい桜もも子供を大切に大切にて 私たち夫婦もたが住む行の家へ出向き たくさんこの子たちを可いがったさは密を 出産した翌年からパートで働くこととなっ た傭兵も可愛い我が子とさと暮らすため もっと多く稼げるようにと転職をし出産前 よりも頑張って働いているように見えた 家族みんなで力を合わせて楽しく過ごす桜 たち家族に私はが小さかった時のことを 重ねるこのままずっと幸せに暮らして ほしい心からそう願っていたそんなある日 さたち家族が私の家へ遊びに来ることと なる可愛い孫とたくさん遊べると夫も朝 からワクワクしていた私ももちろん楽しみ でテーブルの上には孫が好きなお菓子と おもちゃがぎっしり並んでいるしばらく すると玄関のチャイムが鳴り扉の前にはさ と洋平みつがいたおばあちゃんおじい ちゃん こんにちは生まれた時は小さかった強しも 名付けの由来通りこの頃には元気いっぱい の男の子に育っていた大使も強しの後を 走ってリビングへかけていく七は唯一の 女の子ということもあり男子2人に比べる と少し遅れしているようだったそんな七を 見て夫がと同じ目線までしゃがみ手を 差し出すなみちゃんもこんにちは向こうに お菓子があるから一緒に行こう優しい夫の 怖に安心したのか七は素直に手を取り リビングへと歩いて行ったその後傭兵が 追い私とさはさらにその後を歩くその道中 不意にさが足を止めた横並びに歩いていた はずの彼女が突然止まったのでどうしたの かと 振り返るお母さんちょっと2人きりで話し たいことがあるんだけどいつになく真剣な 顔をする彼女に私は少し違和感を覚えたえ いいけどじゃあさの部屋で話そかそうして 引っ越す前までさが使っていた部屋へ行き さはベッドに腰かけ私は勉強机の椅子に腰 を下ろした すると彼女は意を消したように私を見つめ 口を開い た子供たちが5歳になったら疑実家を出て 暮らそうと思うえどうしたの何かあった これまで義実家に住んでいたさから不満や 愚痴などは聞いたことがないさはそのまま ポツポツ話したしそして最後に私にある ものを託して子供たちの元へと行って しまったその後さと洋平は疑実家を出た後 の神居を探しに行きたいから数時間子供を 見てほしいと私たちに頼ん だもちろんたまには2人でゆっくりして おいでその言葉にさと洋平は微笑み子供 たちの頭を撫でた後家を出ていったさたち 家族が来てからだいぶ時間が経つので最初 は緊張気味だった七も今は用意していた おもちゃに夢中だ強しと大使はプラレール で2人一緒に遊んで いるさあ桜と洋平が帰ってくるまで たくさん遊ぼと私は意気込んで腕まくりを したさと洋平が出ていって何時間経った だろうか少し遅いのが気になり時計を見る とそのタイミングで電話が鳴った何か嫌な 予感がして私は急いで電話に出る電話の主 は警察だった えあそうですけどはい はい えわ分かりまし た電話の先で話す警察の声がやけ遠く 聞こえて私は呆然としたまま受話を置く私 の様子に違和感を覚えた夫が近くまで来て 私の肩を 揺らすどうした顔色悪い ぞあなた さと洋平君が私は震える声でさと洋平が 事故にあったことを話したさと洋平は交差 点横断中に車に跳ねられそのまま帰らぬ人 となってしまったのだ今も無邪気に遊んで いる可愛い子子たちにどう伝えればいいの かその状況を考えただけで涙が滲む私と夫 はひとまず色々な確認手続きをするために 病院へと向かった私の肩を支える夫の手も 震えておりこれが現実なんだと思い知る桜 と傭兵の死を確認してからというもの 悲しむ暇もないくらい手続きに暴される ことになる何度も警察や役所へ出向き 手続きをし葬儀場の手配や親戚への連絡 などやることは山のようにあったそうして 行われれたさと傭兵の葬儀にはたくさんの 友達や傭兵の職場の同僚が2人の若すぎる しを悔やんだこんなにも2人は周りに恵ま れていたのかと知り胸が打たれる思いに なる私と夫が式場の従業員と打ち合わせを したり来客に幸せなく対応している中証拠 と意向は知り合いに囲まれひたすらに涙 するだけだった私たちも悲しいのに本当 はってられないぐらい辛いのをどうにか 古いたたせているだけなのだそう心の中で 1人ちる目が回るほど忙しかった葬式で 証拠の私たちがみつ子は立派に育てあげて 見せますと言っていたのだけがみつごを 思いやる心が見えて唯一安心したことだっ た葬式が終わった後も休むことなく忙しい 日々が続いたもちろん残された孫のお世話 もしながらなのでさだ桜と洋平が事故に あった日から三子は私たちの家で暮らして いる桜と洋平が亡くなったことについて 直接的な言葉では伝えずただもう会えない んだということを伝えた小さいながらにも 両親が丸1日帰ってこないなんて不思議に 思っているのだろうもう会えないと理解し なんでかは分からないけど大好きな両親に 会えない現実に少女である七の目に涙がん だ強しと大使はまだ理解できていないのか 泣きだす七を見て不思議そうに頭を撫でて いるどうしたのどこか 痛い俺お薬持ってきてやろうか七が唯一の 女の子ということもあり男子2人は七に 優しく問いかけるきっと自分たちが守るん だという気持ちが無意識にあるのだろう そんな心優しい3人を抱きしめ私もまた涙 を流した私と夫はこの子たちと共に一夜を 過ごしたことがこれまでなかった疑実家に 気を使ってなのかさたちが私の家へ泊まっ たことはこれまで1度もないのだご飯の 内容やお昼寝の時間どうやって何時に 寝かしつけるのかも全く知らない状態だっ た何もかもが手探りの状態で私と夫も余裕 がなくなる大好きな両親と会えないことに 強しと大使も次第におかしいと思い始めた のだろう不安がり泣きだす強しと対し そしてあれから笑顔を見せなくなって しまった七に本当はずっと寄り添ってい たいだがすぐにやらなければならない 手続きが多すぎるのだせめて少しでも分担 できないかと証拠と行くに電話をかけてみ た あもしもしあの手続きの件でお願いしたい ことがあるのですがよろしいですか私の すがるような声に電話に出た証拠は冷たく 言い放つえ ああ私たちはそういうのに疎くてねきっと あなたたちの方がスムーズにできるんじゃ ない正直私たちも得意なわけではないやら なければならないから必死にやっている だけだ だがどれだけ説得しても色々な処理をする のはできなさそうとのことならせめて 手続きが終わるまでこの子たちのそばにい てやれませんかきっと会いたがってると 思いますいや私たちもやることが多くてね 正直そんな余裕はないわいやでもごめん なさいねもう失礼するわそう言って一方的 にに電話を切られてしまったその後も何度 か電話で頼んだがなぜかいい返事が返って くることはない桜と傭兵を失った悲しみも 言えないまま仕方なく全ての手続き孫のお 世話を私と夫でやりまさに慢心総意だ そして残るは財産の分与と真剣についての 話し合いになった証拠と行は家にあった みつの荷物を置いていっただけで財産分与 の話し合いをする今日まで一切顔を出す ことはなかった記憶の中の証拠と育王は 2人にとって初孫ということもありあんな に可愛がっていたのに両親がいなくなって しまったことをもう理解しあんなに元気 だった男子2人も塞ぎ込むがちになって しまった私と夫も悲しみから抜け出せず 重い空気の中で過ごす日々が続くこれまで の手続きで疲労を交配していた私は 話し合いだけはスムーズに行くことを願っ た 話し合い当日証拠と意行が家に着きその まま客間に案内するちょっとお話しして くるから向こうで遊んでいられる長男で ある強しに声をかけそのまま強しは素直に 大使と斜の手を引き別室へと姿を消した私 がまず子供たちのこれからについてどう するのか尋ねるとそれよりも先に翔子が 財産のことについて話を切り出してきた 勝子の主張は今までさたち家族をお世話し ていたのはこっちなのだから財産分野は 全てこちらに渡すべきだということだった 子供のことよりも財産の話と強く言いたい 気持ちをぐっとこらえまずは子供の話を することにすると勝子は信じられない言葉 を発し た書が面倒だから施設にでも入れれば私は 耳を疑った私たちが大切に育ててきたさの 大切な宝物なのだ私たちもさと同様可愛い 孫たちが大切だという認識しかなかっただ がどうやら目の前にいる証拠と育は違う ようだ何も悪びれる様子もなく恐ろしい ことを言う証拠と育王に私の不審感は 高まる面倒だと思うことは私たちに全て 押し付けさんについては過去一緒に暮らし ただけで全てをよせと言ってくる生前さに 打ち明けられたことを思い出し私は怒り からぐっと拳を握ったそしてゆっくり口を 開くさの子供たちは私たちが大切に育て ます財産についてはまた話し合いましょう 強い口調でそう言うと子と育王は今日財産 の権利が自分たちに渡ると思っていたのか 財産は渡さないと 繰り返す可愛いはずの孫のことを少しも気 にかけない証拠と意向の態度に怒りを 通り越して呆れと悲しみがやってくる葬式 上で親戚に私たちが立派に育ててみせると 言っていたのは何だったのか今の証拠と 意向の言動からあの言葉は天才を取り繕っ ただけなのだと思い知らされるどういう つもりだとつりたかったがさと兵を失った 悲しみこれまでの疲労から言葉にするのは やめたもちろん行場のない孫を私たち夫婦 が引き取ることには何の問題もない一緒に 住むのになれるのには少し時間がかかるか もしれないが愛情をかけて育てあげる自信 はあったずっと財産分与の件について話す 証拠と一向に生返事をしながら私は1人胸 の中で覚悟を決める進展しない話し合いに しびれを切らしたのか絶対に財産を渡さ ないと言い捨てようやく証拠と行は私たち の家を出ていったそしてさと洋平が 亡くなってから20年近くの時が経った あの後無事にみつを私と夫の容姿にする ことができた喜びは今でも覚えているあの まま証拠と意の元に大切なこの子たちが 言っていればどんな扱いを受けたのだろう かそう考えるとぞっとし たにはと意については疎になってしまって いることをそれとなく伝えていた引き取っ てもらえなかったこと1度も顔を見せに来 ないことはこの子たちを傷つけてしまう気 がして今も言えずにいる私が説明している 間全員特に悲しそうな顔をすることなく ただ分かったとだけ言っていた両親がい ないことで小さいうちは授業参加の時やマ 友との付き合いなどうまくやれないことが 多くて寂しい思いをさせていただろうだが 3人ともそんなことを感じさせないくらい 素直でいい子に育ってくれた今では本当に 自分の子供のように思うさと傭兵の思いを 受け継ぎみつごと穏やかな日々を暮らして いたある日家のチャイムが鳴った玄関を 開けるとなんとそこに立っていたのは証拠 と意向ではない かどうも久しぶり 本当に何年ぶりだが行子は特に気にする こともなく普通に挨拶をしてきたおお久し ぶりです急にどうされたんですか驚きの あり微妙な反応になる私にメモくれず翔子 と育雄は当然のように話があるとズカズカ と我が家に入り込んできた慌てて私も2人 の後を追いかけ改めて子と伊の背中を まじまじと見る と行ことはあれから財産のことについて何 度か連絡が来ていたが孫の顔を見に来た ことなど1度もなかった私は何度も悲しむ 3人に少しでもいいから会いに来てほしい と頼んだのだが忙しいやら都合が合わない などを理由についに受け入れられることは なかった私たちともだんだん連絡を取ら なくなり顔を合わせるのは本当に久しぶり だお互い様なのだろうがすごく年を取った ように思う勝子は杖を持ちながら一向に 支えられるような形で立っていたひとまず 客間に2人を通しリビングにいた大使に 軽く事情を説明する今もう1人のおじい ちゃんとおばあちゃんが来てるわ挨拶を するから七海と強しも呼んできて くれるそれって前話してた疎遠になった 人そそう何か用事があるのかしら 困惑したままつぶやくと大使はそのまま 自分の部屋にいるであろう七と強しを呼び に行ったしばらくすると大使に呼ばれた七 と強しが客万へやってきたすると翔子と 行こは成長した3人の顔を見るなり優しい 笑顔で長男の強しの手を握っ た大きくなった ね懐かしがるように証は握られたままの 強しの手を撫でるそれに驚いた私は固まる がそんなことを全く意に返さない証拠は 信じられない言葉を発したねえまた昔の ように私たちと暮らし ましょう思いがけな発言に証拠と行以外の 全員が目を見開いたどうして今更一緒に 暮らしたいのならばなんであの時密を 突き放したのこの子たちが本当に辛い時 そばにいなかったくせに もうずっとずっと顔も見せていなかったの に言いたいことがありすぎてどれを口にし たらいいかわからなかった何も言わない私 とみつ子に勝子は畳みかけるように話を 続けるいやね最近私足が悪くて今は主人が 支えてくれてるけど2人ともいつどうなる か分からないじゃないあなたたちがそばに いてくれれば安心だわ最初は孫が成長 もう手がかからない年になったからかと 思ったがどうやらそうではないらしい自分 の世話をさせるためにこの子たちを利用 するのあの時あんな風に大切な孫を 切り捨てておいて何を都合のいいこと言っ ているのか少しも変わっていない2人の 様子にもはや呆れて言葉も出ないがこの子 たちがいいように利用されてはいけないと 私は反論しようと動くだが私の前に口を 開いたのはだったあんたたち誰面倒だから 帰ってくれません強しは迷惑そうに言い 握られた証拠の手を振り払う強しと同意だ という風に七と大使も厳しい目で勝子と育 を見た当然受け入れられると思っていたの か予想とは違う反応に翔子と育はかっと 怒りをあわにするそして翔子が私のことを 指さした あの人が私たちとあなたたちを引き裂いた のよ本当は一緒に暮らしたかったのにでき なかったのその言葉にまるで心がこもって いないことに気づいている孫たちはなおも 冷たい視線を証拠と意に浴びせ続けたいつ の間にか随分と成長し立っていると自然に 証拠と育を見下ろす形となる強しと大使は 私と七を守るように前に立ってくれた そんな強しと大使の態度が気に食わない 証拠と育はくったはみするそして昔あんな に素直でいい子だったのにお前らはこの 夫婦に洗脳されたのだと言い放ったその 発言に私もいよいよ我慢ができなくなる 怒りでのんてしまいたい気持ちをぐっ こらえ私は棚の引き出しからあるものを 取り出し証拠の前に差し出した さが生前私に打ち明けてくれたことがある んですこれはその時に一緒に渡されたもの ですあの日の桜の辛そうな表情を思い出し 自然と声はもっと低く なるあなたが桜に対して辛く当たっていた ことここに全部書いてありますさが事故を する直前さは私に小さな手帳を私に渡した 中を見るとそれはと文字が書かれており 日記のようなものださにこれを託された時 は軽く全てのページを流しただけだったさ と傭兵が亡くなり慣れなかった生活にも 少し余裕が出てきた時この日記の存在を 思い出し初めてじっくりと1ページずつ 読んだのだそこにはさが学生の身で出来こ だったのをおいに感じているのをいいこと に勝子が嫌な態度をしていたことそして桜 は誰にも言えず我慢するしかなかったこと さの食事が増えてくると食費がかむと言っ て妊娠中のさの食事を減らされたことさと 傭兵が見ていない間に勝手に財布や通帳 からお金を取られていたこと他にも今まで さが証拠と一向にされてきた仕打ちが つらつらと書かれていたページによっては 涙の後のようにペンが滲んでいるところも ありこの日記1つでどれだけ桜が心苦しく 毎日を過ごしてきたかが伺える証拠以は 恐る恐るその手帳を手にし1ページ名を 読んだところでパタンと手帳を閉じその先 を見ることはなかったその反応からこの 日記に書いてある内容は間違っていない ことを案に示しているみの前で親の辛い 場面を口にするのはためらわれたがもし 大切なこの子たちが証拠と育にいいように 用されるかもしれないと思ったらさが私に 託してくれた数々の証言をここで告げる しかないのださはあの日クリスに私に全て を打ち明けてくれた我慢するたびに心が すり減り本当は義母とも仲良くしたいのに 叶わないことが悔しいとも言っていた そんなさの姿を思い出し拳を握る力が強く なる桜がどんなに苦しかったか その言葉は自分自身にも言った言葉だった なぜ娘の苦悩に打ち明けてくれるまで 気づけなかったのかだが勝子は日記を見た にも関わらずそんなこと覚えていないの 一点張りで謝罪も反省もする気配はない それよりもと再び東京を要求する証拠と 育雄に私は深いため息をつく証拠と育 そしてさの苦しみに気づいてあげられ なかった自分自身への怒りから涙が滲み そうなのをこらえていると七がそっと私の 背中をさすってくれたそしてみつ子自身も 幼なかったながらに子がさにつく当たって いたことを春に覚えているそうだ七は特に お母さん子だったため家の中ではずっとさ のそばにいたそんな彼女の記憶では子がさ に厳しい態度を取っていたのは決まって兵 がいない時だったというかかに思い出す 記憶の中で唯一はっきり覚えているのは 証拠と話すとよく桜は悲しそうな顔をして いたということ疑実家と同居している時は 幼なかったのでただ見ていることしかでき なかったことを悔しそうな表情で 話す密を引き取ってから今までそんな話は 一切してこなかったので正直私は驚いた きっとこの子たちなりに考え変に私と夫に 気を使わせないようにしてくれたのかと 感じ胸が温かくなるそれと同時にそんな 幼い子供の前でもさに対しつたっていた 事実にさらに怒りが湧いたそして強しと 大使の横に七が並びまっすぐな目をして口 を開いたそんな人のとろには行きたくあり ません代表していた強しの言葉に太しと七 も同じ表情をする に続き私も口を開いた私も大切なこの子 たちをあなた方に渡すことはできません そうはっきりと私は告げるしかしそんな私 とみの主張にも証拠と育王は一緒に住もう と食い下がってきたなかなか思い通りに ことが進まないからか2人には焦りの色が 見て取れる随分体力も落ちてきておそらく 生活にも支障が出てきているのだろう私も 年々を感じているから証拠と育の気持ちは 分からなくもなかったそして体が辛い時に 支えてくれるこの子たちの存在がどれだけ 大きいかも同時に知っているだからこそ そんな都合のいい理由で大切な我が子を 利用されるのは我慢ならなかった諦めの 悪い証拠と育にみつ子は今まで冷静に会話 をしていたがとうとう怒りを荒に する親がくった時あなたが私たちを面倒 臭いからって施設に追いやろうとしたこと 私たちなんとなく覚えてい ますそんなことも覚えていたのかきっと 当時のこの子たちにとっては辛かったろう と胸が痛くなる証拠と育雄は覚えがないと とけるが大使も負と言い返したあの時の あのセリフを今そっくりそのままお開始し ます なので帰ってくださいどうしようもない なら施設に行け ば大使に続き強は先ほどの言葉を再度 繰り返した七も強い意を持ったように証拠 と意向を見つめている17年前に面倒くい からと突き放されたこの子たちは立派な 大人になった今あの時突きつけられた言葉 をそのまま証拠と行へ返したのだその言葉 で私とが切磋しながらこれまで密を育てて きたことの意義があるように思えた 晴れやかな気持ちになる私をおよそに証拠 と育はいたしげに顔を歪める強し大使の 言葉でさすがに諦めるだろうと思われたが 予想に反して証拠で行は苛立ちを見せる だけで反省するそぶりはなかっ た本当なら兵が私たちのお世話をして くれるはずだったのにもういないだから あんたたちが世話をするのは当然 でしょそうだそれができないのなら毎月 生活費を渡せ小さい頃たくさん世話して やった恩を忘れたの か反省するどころか2人はさらに理不尽な 要求をしてきたついには今まで世話をして やった分のシレ金を支払えとまで行ってき たのだこれにはさすがに私も言葉が出 なかった こんなにも証拠と意向に人情がないとは 思わず驚きが隠せないからだ驚きのあまり 固まる私に対しやれやれと言った風に みつ子は顔を見合わせた最初に口を開いた のは警察官になった強しだこれ以上騒ぎ 大きくするなら警察を呼びますよ僕は警察 感なのですぐに対応してくれると思います 驚く証拠と意向に対しその次に口を開いた のは弁護士になった七だもし今後こんな風 に私たちの大切な家族に脅迫間なことをし たらその時は法的処置を取らせてもらい ますどんどん顔が青ざめていく証拠と行を とどめを指したのは市役所職員になった 大使だそれとあなたたちは固定資産税を 滞納してますよねそろそろ差し押さえの 手続きが入ると思いけどもっと他にやる ことあるんじゃないですかその言葉を聞き 子と伊は2人で顔を見合わせるどうやら 心当たりがあるようだそのまま2人は さっきの勢いはどこへやらうれながら家を 後にした私はこんなにも頼もしくなった3 人の背中を後ろから眺める辛いこと両親が いなくても苦労もあったはずなのにこの子 たちはこんなにも家族思いの素敵な大人に 育ってくれた感動から涙がこぼれる私に みつ子は寄り添い優しく手を握ってくれた のだったその後私の家に証拠と意向が突撃 してくることはなかったがそれぞれの職場 に度々押しかけてその度に2人は通報され ているそうだ前回あんなにも激しい 話し合いをして諦めてくれたと思ったのに なかなかしぶい2人に私もどうしようかと 悩んでいた そしてどうしようもないまま時が流れ しばらくした時に強しから報告があると話 を切り出してきたなんと証拠と意向が警察 に捕まったというのだ何でも強しの警察署 に押しかけまた通報されそうになった ところを意行が警察官に掴みかかったそう だこれは立派な公務執行妨害だこれまでの 迷惑行為も含め2人は逮捕されたとのこと その事実にほっとした私は改めてみつ子に お礼を 言うこんなに立派に育ってくれて ありがとう何度言っても言い足りない 気持ちを口に するこちらこそだよすごく感謝し てる本当に辛かった時そばにいてくれて ありがとうここまで俺たちが大きくなれた のは2人のおかげだよと私と夫にこれまで のことへの感謝の気持ちを伝えてくれた みつ子の優しいおかにさの姿が重なって 見え私は何とも感慨深い気持ちになった そして証拠と一向の逮捕から数ヶ月たった 今でも三は私の家で家族みんなで仲良く 暮らしている今それぞれお付き合いして いる人がいるそうだ結婚も視野に入れる 年齢になり誰が私と夫と一緒に住むで 取り合いになるほど私たち家族は穏やかで 平和な日々を過ごすことができるように なっ た主人である淳の還暦祝に娘のさが高級 フレンチの予約をしてくれた私は美容室に 行き以前淳にプレゼントしてもらったワン ピースを着た淳の不もクリーニングに出し プレゼントも用意した高級フレンチなんて 年ぶりだろ年がにもなく浮かれてしまっ た当日早くついてしまった私はレストラン の近くのカフェで時間を潰すことに1人で ホットレモンティを飲んでいるところに 仕事帰りの娘のさが合流してくれた雑談し ていると予約の30分前になって淳司から 電話残業で間に合わないから今日は無理 レストランはキャンセルしておくから ちょっと待ってよ少しくらいなら時間を ずらしてもらえるかもしれないじゃない いつ終わる のまた今度でいいだろ忙しいからもう切る ぞいくら忙しいとはいえこんな急に せっかくさが予約してくれて楽しみにして たのにと落ち込んでいると事情を知ったさ がニコニコとしながら立ち上がった 今キャンセルしたならまだ間に合うよ実は 私も行ってみたかったんだもう30分前だ から用意してるだろうしレストラン行って みようよそうねせっかく予約してくれたん だもの ね気持ちを入れ替えて結婚前の娘と最後の デートこれはこれで楽しみだわとお店に 行くとキャンセルの連絡はなく別の人が もう予約の名前で来ているという その人物の後ろ姿を見て淳に電話を かけるまだ会社だよ仕事で忙しいんだ レストランはキャンセルしといた からそうなのねごめんなさいところで あなたその赤ワイン好きよね仕事中に 飲めるなんて羨ましい わ夜景の見える席に座っていた男が フォークを置いて携帯を耳に 当てるどこから見られているのかと焦る 様子を見て呆れてしまった私が歩いてきて いることに気がつくと淳の顔がみるみる 青ざめるそして娘のさも一緒にいることに 気がつい て私の名前はまゆ55歳夫の淳と娘のさと の3人家族だ淳との出会いは大学生の頃に 参加して ボランティア団体だったすでに社会人で5 歳年上の淳はとても優しくて頼りになる 大人の男性だったので私はすぐに惹かれて いった何度か2人で出かける機会があり私 から告白それからは順調に交際していた私 が大学を卒業する前のクリスマスに レストランでプロポーズをされて卒業し たら席を入れることになっ た卒業式の日にはべたすぎるけどなんて 言って花束をくれた周りの人たちに 冷やかされたのも今となってはいい思い出 ださが生まれてからは淳は小煩悩で育児に 積極的でありいい父いい夫だったお遊戯会 も授業参官も運動会もかさずに来ていたし 毎日の育児だって脚で頑張ってきたその会 あり娘のさは両親思いのとても優しい子に 育ったそんなさも大学を出てから立派に 会社員として働いているそして嬉しいこと に素敵な人と出会いもうすぐ結婚式を あげる予定 だ娘は結婚夫は今年無事に暦を迎え人安心 と言ったところ 祝にたまにはデートしてきなよとさが何 ヶ月待ちは当たり前という高級フレンチ レストランを予約してくれて3ヶ月後に夫 と2人でディナーに行くことになった高級 フレンチなんてプロポーズされた クリスマス以来かもしれない私は以前 誕生日にプレゼントされたワンピースを クリーニングに出して美容室まで予約して しまった私のお祝いでもないのに気合いの 入れすぎかなと思ったが高級フレンチに ふさわしい格好じゃないとと言い訳をして 淳のスーツとシャツも共にクリーニングに 出し たスーツクリーニングに出してくれたの それじゃあネクタイはあの深緑のやつに しようか な深緑のネクタイはさが初人休で プレゼントしたものだもう10年以上経つ が何か大切なことがあるは必ずこの ネクタイをつけて気合いを入れるんだと 言ってい たそれから数日後今日はさの結婚式の準備 についての話を聞くついでにランチに来て い た友人代表挨拶はゆに頼んだんだお母さん ゆと会うの久々だよね覚えてる覚えてるわ よでももう何年と会ってないからきっと 素敵な大人の女性になってるんでしょうね もちろんもう私たちも32だからね立派な レディー よ私たちは自分で言うのなんて軽打を叩き ながら中学時代のゆみちゃんを思い出した さの1番の親友で少し大人しくて 可愛らしい感じの子学生時代はよくうちに 遊びに来ていたしお互いの家で何度もお 泊まり会をしていた 社会人になってからはうちに来ることは 減ったが旅行に行ったり食事をしたりと相 変わらず2人仲良くしている様子はよく 聞いてい たもう1人の娘みたいなものなんだから 会えるの楽しみ元気にしてるのああうん まあ元気は元気なんだけど ねなんとなく煮えきらない態度 とどうやらあまり良くない恋人がいる よう私の結婚式で他に素敵な人見つけて くれたらいいんだけど ね大きなお世話だけどと笑って見せてる けどさは本当に心配をしていた少し暗く なってしまったので先日試着した何着かの カクテルドレス写真を見せてもらいながら 話題をさの結婚式に戻したウェディング ドレスはだよと見せてはくれなかったので 当日のお楽しみきっとベールをかけて あげる時も淳と腕を組んで歩く時も私は 号泣しちゃうんだろう なそれから3ヶ月が過ぎ今日は淳の還暦祝 私は淳に内緒でプレゼントを用意していた 前から欲しいと言っていた一眼レフカメラ 淳は退職した後はカメラを持っていろんな ところに行くのが夢だと言ってい た日本中をデートしてたくさん写真を撮る んだってお父さん言ってたよラブラブだ ねさにそう教えてもらったので少し期待し つつカメラを購入した私は若いうちにサチ を産んだのであまり旅行に行っていない どこそこに行きたいと言っていた私の言葉 をを覚えてくれてたのかと顔がにやけるの を抑えてカメラを受け取りに家を出 た美容室でヘアセットをしてカメラを 受け取ってから仕事終わりの淳とお店の前 で集合する予定だ思った以上に早く用事が 終わったので集合時間まで結構時間がある 高級フレンチでデートなんて久々なので 少し緊張してきた一度落ち着こうと近くの カフェに適当に入りホットレモンティを 頼ん だ猫舌の私はふーふーと冷まさないと紅茶 が飲めないゆっくり飲んでいるとさから メールが来 た今からデートだよね感想教えてね私は今 から帰り ますそうなんだけど早くついちゃったから カフェで時間潰し中えそうなのレストラン の近くにいるなら少し合流しよっか な仕事帰りに近くを通りかかったというの でさと合流してレストランの予約時間まで 2人でお茶をすることにサチが到着する頃 にはようやく紅茶が飲めるくらいの温度に なってい たうわお母さん髪型可愛いそのワンピース もいい感じ じゃん美容室で落ち着いていてきれめな まとめ髪でとをお願いした部屋セットは 悪くないよう だ仕事終わりでスーツのさが席について アイスコーヒーを 頼む19時からだよねまだ結構時間あるよ ねお父さんは残業とかならないといいけど せっかくさが取ってくれたレストランだ ものきっと喜んでくるはず よ何時頃つくのか携帯を見てみると ちょうど淳から着信が来た 悪い残業で行けなくなっ た一言だけだっ た3ヶ月前から分かってたのに集合時間 30分前に言うこと行けないって何時に 終わるの少しくらい遅れてもレストランに 聞いたら大丈夫かもしれないじゃ ない色々言いたいことはあるがここで喧嘩 してもしょうがない淳は今日の主役なんだ から何時頃終わるん コースの開始時間を少しずらせないか聞い てみようか分からないよ俺がキャンセルの 電話しておくからまた今度でいいだろ悪い けど忙しいからもう切る ぞさがせっかく予約を取ってくれたのに こんな日に残業なんてキャンセル量だって かかるしどうやって払うつもりだろう 振り込みもう30分前だし準備もしている だろうし また今度って予約が取れるかもわからない の にぐるぐると考えて一息つこうと口に運ん だレモンティはすっかり冷え切ってい たお父さんどうした のまずは予約してくれたさに謝らないと 状況を説明するとさは少し落ち込んだ顔を したが急にパッとは顔を明るくして残って いたコーヒーを飲み干し あと30分で予約時間だしお店ももう準備 してるんじゃないキャンセル量だって もったいないしお店行こうよ今から キャンセルの電話するんだらまだ間に合う てえでもだってお父さん何時に仕事終わる かわかんないくらい忙しいんでしょそれ ならご飯食べて帰っても大丈夫だっって私 も行ってみたかったん だ確かにせっかく予約を取ってくれた何 ヶ月待というレストランだこんな時間に キャンセルだなんていくらキャンセル量を 払っても迷惑かもしれないお祝いは淳の 言った通り別の日にして今日はお嫁さんに 行く前の娘とのデートに しようすみません19時から予約していた 岡田です先ほどキャンセルの電話があった と思うんですけれど来れるようになったの でさすが大人気レストランたくさんの人で 賑わっていた夜景が見える席がいいねと 案内町の私にさが後ろからぼそっと つぶやく持っていたノートを見ながら少し 顔を曇らせた案内役の店員さんが岡田様で 間違いないですかと確認して くる本日岡田様というお名前でのご予約は 一組だけなのですが先ほどすでに別の方が いらっしゃっておりますキャンセルのご 連絡も今日は頂いておりませんご予約 いたいた時のご連絡先を伺ってもよろしい でしょう かさが自分の電話番号を 告げるそうですねご連絡先はお間違いない ですねしかし先ほど別の方が2名岡田様の 名前でいらっしゃいましてえでも夫が来れ なくなったからキャンセルすると言ってて 急遽娘が来れるようになったのでまだ 間に合うならと思って一体誰が もしかして誰かが私たちの予約を勝手に 使った確かにさが予約を取ってくれたこと が嬉しくて自慢した人もいるでもそんな ことをする人なんて誰がいる の困惑する案内役の人にさがどの席の人 ですかと 詰め寄る私が予約をした岡田って確認は 取れましたよねそれなら誰が勝手に私の 予約を使ったのか知る権利はあります教え て くださいあちらのお席ですと言われたのは 入り口から1番遠い窓側カウンター並んで 夜景を見れる素敵な席ださと近くの柱に 隠れた男女の2人組そして男性の方は見 間違いよもない先ほど残業で行けなくなっ たと冷たい口調で電話をしてきた淳だった 女性の方は顔が見えないがどう見てもより うんと年下の若い女性のよう だ還暦祝に残業と嘘をついてキャンセル すると言った店に女性と2人で来ている この状況が理解できないわけもないが理解 したくなかっ た悲しみはもちろんあるが大事な娘が予約 してくれた店でなんてことをという怒りが 大きかったそして何より今隣でさも座って いる男性が淳であることに気がついていた 見間違いで会ってほしいと電話をかけて みるねえまだ残業 中なんだよまだ会社だよさっき言っただろ 終わる時間わからないし忙しいんだよもう 来る ぞ淳に電話をかけるとカウンターの男性も フォークを置いて電話に出るそう忙しいの にごめんねところで淳その赤ワイン好きよ ね仕事中に飲めるなんて羨ましい わ淳はパッと携帯から耳を離して辺りを 見回すあんなに焦るくらいならこんなこと と思いながら淳の元へ歩いていくもちろん さも後ろからついてきて私たちに気づいた 淳は顔を真っ青にした女性は下を向いてい て顔がよく見えないそしてそんな女性を 隠すように淳が立ち上がっ たこんなところでお仕事大変ねまだ会社 って言ってなかったあなたの会社はいつ からこんな素敵なお店になったのかしら それにその女性は誰こんなところで何し てる のまゆみなんでこんなところに終わったん だよさっき仕事が終わってその行きに残業 を頑張ってくれた礼 にって電話で会社って言ってたわよねつい 10分ほど前に残業だから無理って電話し てたった今会社にいるって言って下手な嘘 は見苦しいわよちゃんと話して嘘なんか じゃともごもごする淳に呆れていると私の 後ろで黙っていたさが淳の後ろで俯く女性 に近づい た ゆみゆみゆってさの友達 のゆと呼ばれた女性は恐る恐る顔をあげる メイクをしているしもう何年と会ってい ないが確かに昔うちに遊びに来ていたさの 親友だっ たさっきたまたまさのお父さんと会って ご飯で持ってなっただけ で気まずそうな顔で目を泳がせながら バレバレの嘘をついたいいよそういうの 60歳の既婚者と不倫してるって言ってた もんねやめろって私何回も言ったのに ゆみちゃんどういうことか説明して くれる自分で言ってたよね60歳の人と 付き合ってるって祭祀持ちだけど娘が結婚 したら離婚して結婚するんだってあれうち の家庭のことだったん だ良くない男性と付き合っている感じだっ たがまさか不倫だなんてしかも親友であり 不倫相手の娘でもあるさにその話を聞かせ ていたということ 娘の親友に手を出す淳も親友の父親と関係 を持つ弓も意味がわから ないさが問い詰めるとゆみちゃんは しぶしぶ口を開い た高校生くらいの時から淳さんのこと かっこいいなって思っててクラスの男子 なんかより大人だし優しいしさの家で遊ん だ後ちょうど帰る時に玄関の外で仕事帰り の淳さんと会うからそこでなんとかデート に誘ってみたりしてて高校の卒業式の時に 連絡先を教えてもらった のそんなに前からだなんて私もさも全く 気づいてなかった大人に憧れる気持ちが 分からないことはないが行為があるのを 分かってて連絡先を教えた淳のことは許せ ない大学生になってからは何度か2人で 食事して卒業する頃に淳さんから付き合お うって言ってくれたの もう10年以上は付き合っ てるよによって淳から交際を卒業する頃 って私にプロポーズしてくれたのと同じ ような時期だったのねなんだか全ての 思い出にケチをつけられているような気分 だっ たさも結婚するしもういいだろ子育ても 終わって俺は長年いい夫いい父親を頑張っ てきたんだそろそろお互い第2の人生を歩 むってことに しよう第2の人生を歩む最初からその つもりだっった今まで夫婦で子育てを 頑張ってきて夫婦2人きりの時間が短かっ ただからこれからは2人でたくさん 出かけるつもりだったそのためにカメラを 用意したのにこれは浮気相手と結婚して たくさん写真を取るために欲しかっただけ なの ね言いたいことはたくさんあるのに言葉に ならないこぼれそうな涙をこらえていると 明らかに少し立場の上の店員さんがやって きた他のお客様のご迷惑になりますのでと 言われてからようやくレストランの中だと いうことを思い出した後日また話し合い ましょう私とさは帰りますあなたは今日は 帰ってこない でさに手を引かれ淳たちに背を向ける時に 少しだけゆが勝ち誇った顔をしたように 見え た後日私淳ゆゆのご両親の5人で話し合い をすることになった誠に誠に申し訳ござい ませんでし た玄関のドアが開くと弓のご両親が地面に つきそうなほど頭を下げてい たお久しぶり です娘がどんなことをしてしまって本当に 申し訳ありませ んリビングに通して私の迎えにゆとご両親 私と弓の間のいわゆる誕生日席に淳が座っ たさちゃんとはずっと仲良くしてもらって いたのにお2人を裏切るような真似をして しまって申し訳ございません学生時代から そんな気持ちがあったことも全く気づかず 私たちの責任でもあり ます2人はまたを下げ一方淳とゆは何が 悪いのかと言わんばかりの仏面だいえ娘の 友達に行為を向けられて本気にした主人に も責任がありますお2人はもう頭を下げ ないで くださいなんでお父さんたち頭下げるの 私たち悪くないじゃん ゆ高校生に行為を向けられて大学生になっ てから何度もデートをして者でありながら 交際を申し込んだ淳に火があるのは 明らかゆに責任がないとは言わないが高校 生の頃に淳がきっぱりと断れば良かったの だからある意味被害者そう思いたかったが 彼女ももう32歳立派な大人 だだって私の方が若くて可愛い淳さんは もうまゆみさんのことなんておばさんに しか見えないって言ってたし私の方が愛さ れてるの分かるでしょう ゆみやめ なさいバンと机を叩いてユの母が声を 荒げる私がおばさんなら5歳も上の淳は もっとおじさんに見えるのに恋は盲目とは このこと か淳さんは私が高校生の頃からずっと私の ことだけを愛してるのクリスマスも誕生日 もプレゼントくれてゆは可愛いなって たくさん言ってくれてたのそうだ 高校生の弓に比べたらお前はおばさんに なるばっかりで昔みたいに可愛くもないし お前みたいな家政府と一生添い遂げる なんてまっぴらごめんだむしろ好きでも ない家政府のことをずっと養ってやってい たんだから感謝されるべき だ私が憧れて好きになった男はこんなに見 ともない男だったの娘の友達に行為を向け られてそれを間に受けてデートするような 妻にクリーニングに出してもらったスーツ を着て娘にもらったネタを閉めてデートに 行くような男だったの ねずっといいお父さんで憧れてた人で みすぼらしくもないように美容にも気を 使ってたつもりだっ たは話にならない さっち洗面所につがる扉に向けてそう呼ぶ と手にボイスレコーダーを持ったが出てき た先ほどまでの発言は全てここに録音され ていますこれを持って弁護士に相談し2人 には不倫の慰謝料を請求し ます慰謝料と聞いた途端に淳とゆの顔が 青ざめる弁護士ってさのご主人のお 知り合いに弁護士さんがいるそうなので その人に相談済みです長年の不定行為2人 に慰謝料を請求する権利はあります それを聞いて青めたゆはさに近寄っていく ね私たち親友でしょ中学生の頃から20年 近く仲良くしてたじゃんそれに私が淳さん と結婚したら私がさのお母さんになるんだ よそんな私に慰謝料っておかしい でしょさは泣きそうになりながらも涙を こらえ弓を睨みつけたその目線にたじろぐ 弓だが私たち親友だよねと何度も つぶやく20年近く親友だったね親友だっ たそれでそのうちの何年間私とお母さんを 裏切っていたの悪いのは弓 でしょうと目を泳がせる弓だったが一歩 また一歩と距離を詰めるさから逃げるよう に淳に近寄った逃げてきた弓を庇うように さを睨んで私に向かって淳が声をげ ただの家政府が慰謝料なんてふざけるな ゆみはさの母親になるんだし慰謝料なんて 請求するなら今までお前にかかった金を 返せゆみちゃんがさの母親ふざけないでさ の母親は私だけさにもらったネクタイで 不倫するあなたなんかもう父親でもない この子は私だけの子よ大体きっかけがどう であれ長年不倫関係を続けていたのは そっちなんだからあなたた有責での離婚な のは変わらないわ慰謝料はお互いに払って もらい ます勝ち目がないと思ったのか顔を真っ赤 にする淳マサを通り越して真っ白になった 弓は両親を見たおそらくは助けて欲しかっ たのだろうが2人は弓を一別するともう目 も合わせ ないその環境を続けるのならお前はもう うちの娘ではない自分で慰謝料を払って 結婚なり何なり好きにするといいうちには 2度と帰ってくる な両親に見捨てられると思わなかったのか 方針状態の弓そんな状態でも淳のそばを 離れないのでおそらくこの2人は関係を 終わらせる気はないのだろうこちらとして もこんな男ともう夫婦でいるつもりもない しさの父親ずら友達ずらをされるのも ごめんだ 詳しいことは弁護士を通して連絡しますの でと告げると由のご両親が淳と弓を 引きずって帰って行っ たその後弁護士を通して慰謝料を請求した が2人は未だに俺たちは悪くないと支払い を拒否しているあまりに話が進まないので 裁判で争うことになったがなぜか当日現れ ずこちらの希望通りの金額で慰謝料を払っ てもらうことになっ た裁判所から連絡が来て焦った2人から私 とさに電話やメールが大量に届いたが そちらは無視した今更謝罪や幻覚の要求 など飲むはずがない裁判所に来なかったの が悪いわけだし話し合いの時に散々言われ たことも忘れていない相場より少し高めの 金額で請求していたためその要求が通り 一括で払った2人の貯金はすっからかんだ そう だゆと淳はお互い両親に門前払いをくらい 頼る人もいないまま狭いアパートで細々 暮らしているらしい淳のご両親は高齢な こともありせっかく離婚理由を伏せていた のにいきなり孫ほどの女の子を新しい嫁だ と連れてこられるなんてお父さんも お母さんも想像していなかっただろう さの結婚式は予定通り行われた友人代表 挨拶もなくなったその代わりというのも なんだが新郎の友人さんたちが急遽余興を 行ってくれ大盛り上がりとなりとてもいい 披露宴になったバージンロートだって私が 歩くことができて少し得した気分 だお母さんもしよかったら僕たちと同居し てもらえませんか子供が生まれるので一緒 だと心強くてもしお母さんが嫌じゃなけれ ばです けどとても嬉しい提案だが新婚の2人に 迷惑をかけるわけにはいかないので結構な 金額になった慰謝料を使って2世帯に 増改築し た来年の春にはさがお母さんになる私は 可愛い孫に会えるのを楽しみに娘夫婦を さえていこうと思う