日本有数の豪雪地・福島県只見町。買い物弱者である住民の暮らしを支えるため、奮闘する女性移動販売人。過酷な冬、移動販売人には様々な障害がありました。それでも、「住民を買い物弱者にはさせない」という強い信念の裏には、特別な思いがありました。
■移動販売を始めて2年「見て買ってもらいたい」
舞台は只見町。4カ月前、全国から注目を集めたローカル鉄道が走る町です。
11年前、豪雨により甚大な被害を受けたJR只見線が去年10月、全線で運転を再開。全国から多くの人が押し寄せ、にぎわいを見せていました。
そんな、只見町はこの時期、一面が雪に覆われた銀世界に…。実は、全国でも有数の豪雪地帯なのです。
町の住民は、4000人足らず、およそ半数を65歳以上の高齢者が占める、過疎の町です。
住民:「(雪で)トタンが弾けちゃって。空き家も結構あって、年寄りばっかりで。特に山間部はすごい高齢化が進んでいる」
そんなこの町には、高齢者たちに愛される“救世主”がいます。
雪国の買い物弱者を支える移動販売。この町で育った角田玲さん(48)が切り盛りしています。
常連客(76):「こっちにはなくてはならない人。年寄りの所、来てくれるんだもん。ありがたいわ」
生鮮品や日用雑貨など、商品はおよそ300種類。公共交通機関がないエリアを中心に回っています。
玲さんは、移動販売を始めて2年足らずですが…。
客:「あとアレあっかえ?アノなんだっけ…やだ出てこねぇ」
玲さん:「ふりかけ?」
客:「まんま…」
玲さん:「お茶漬け?」
客:「お茶漬け」
玲さん:「はい!出てきた~」
欲しい物はお見通し!お客さんとの距離が近いのです。
玲さん:「卵入っているから気を付けて」
客:「大丈夫だ」
玲さん:「よく結んどくは結んどくけど。気を付けてねっていうか、オレ持ってく」
お客さんを気遣い当たり前のように届ける玲さん。
常連客(92):「よくやってくれる、優しく。楽しみ、週に1回来るの」
玲さん:「年配の人たちが移動手段がだんだん減っているのは分かってた。やっぱり移動販売。見て買ってもらいたい。品物を見て選んで買ってもらいたいっていう、そういう気持ちもあった」
■不便解消だけでなく…“交流の輪”作りも
玲さんの販売エリアには、スーパーが1軒もありません。日常の買い物のほぼすべてを、玲さんに頼らざるを得ない高齢者は少なくないといいます。
飯塚孝子さん(80)。夫の恒夫さん(88)と二人暮らしです。
冬場は買い物に出られないため、食卓に並ぶのは、夏場に自分たちで育てた野菜の漬物など、保存食がメインだといいます。
孝子さん:「まあしょうがねーなーって、我慢するしかなかった。(今は)もう1週間に1回来てもらえると思うと。大体1週間分買うと、また玲ちゃん来てくれるって思うから」
週に一度、玲さんが届けてくれる新鮮な生鮮食品や果物を買うのが、何よりの楽しみだといいます。
孝子さん:「これハッサクか?」
玲さん:「それハッサクと甘夏」
孝子さん:「甘夏1つもらうか」
玲さん:「はーい」
さらに、買い物の不便さを解消しただけではありません。
自宅に閉じこもりがちだった高齢者が、移動販売をきっかけに交流の輪が生まれたのです。
常連客(75):「楽しくなかったら集まらないよな」
常連客(70):「一人でうつうつといるよりも、ギャハハって。ストレス発散だよな」
■「収支はトントン」 雪国の事情で値上げできず
10年に一度と言われた強烈な寒波も相次ぐなか、移動販売人の雪国ならではの過酷さとは…?
玲さん:「ホントおっかなくて(速度を)出せない…。ずーっとこういう状態」
商品を仕入れる市場までは、片道およそ90キロ。路面が凍結する冬場は、倍近い時間がかかるため、出発は早朝です。
移動だけで、往復5時間がかり。安くて新鮮な食材を手に入れるには欠かせないといいます。
仕入れ先:「彼女よく撮ってあげて下さい。頑張っているから」
そして、何をするにも、とにかく雪との闘いです。
玲さん:「しょうがないよ、積もっていれば片付けとかないと」
いくら雪かきしても、1時間も経てば…この通り。瞬く間に降り積もってしまう雪。
常連客(86):「オレ歩くっぺと思う所(雪を)退けといてくれたり、ありがてえやわ」
お客さんの家から移動販売の売り場まで移動する度に、雪かきに追われることも…。さらに、あまりの寒さに、商品の変色や凍ってしまうこともあります。
玲さん:「見て、バナナも色変わっちゃって」「(Q.寒くてってことですよね?)寒くて真っ黒になっちゃった。やばいよね、売れないなコレ」
玲さん:「移動販売をやっていると、ロスが絶対出てくる。それはマイナスだから…」
移動販売の経営は、決して楽だとは言えません。
玲さん:「いろんなモノも高くなっているし…燃料代も上がっているワケだから。もう今は(収支は)トントン」
それでも、常連客たちの雪国ならではの事情を考えると、この時期、商品の値上げに踏み切れないといいます。
孝子さん:「ご飯もあれだよ、電気釜でやっていたけど、電気代高くなったから釜。電気も大事に使わなくちゃって」
地元では、屋根や玄関前の雪を溶かすための装置を動かすため、冬場は電気代が跳ね上がる家庭が多く、年金暮らしの常連客の生活を思うと、値上げはできないといいます。
■家族のような支え合い「皆お母さんみたいな感じ」
玲さんが移動販売を始めたワケ。それは3年前、家族で経営していた、この地域唯一のスーパーを閉じたことにありました。
玲さん:「もう負い目だらけ。必要とされてるって、いつも思っていたから。だから本当に辞める時の決断っていうのは、すごく迷った…」
経営状況の悪化から、やむなく閉店を決断。地元の施設向けに販売を続けていましたが、買い物弱者にしてしまった常連客への申し訳ない思いが、日に日に募っていったといいます。
そこで玲さんは、閉店からおよそ1年半後、移動販売をスタートさせたのです。
只見町に熱意を伝え、高齢者の生活を支援する事業として、車を借りることができたのです。
母・高子さんと二人三脚で、かつての常連客の元を回ることができました。
玲さん(当時46):「閉める時にも言われていたんですけども、『本当になくなると困る』って。だから、やっとちょっと恩返しができたかなと」
一度は買い物弱者にしてしまった住民たちに、二度と不便な思いをさせたくない。そんな玲さんの思いに、住民たちも応えてくれているといいます。
常連客(80):「玲ちゃん持ってくるようなのは、市街地に行っても買わない。玲ちゃん支援したいから」
常連客(75):「無理して体壊さないで、頑張ればいいなーって。娘のような感じ」
去年8月、一緒に移動販売を回っていた、母・たか子さんが、がんで他界。大きなショックから立ち直れたのも常連客の支えがあったからだといいます。
玲さん:「もうお客さんとも泣きながらやっていた。皆、お母さんみたいな感じ。いっぱいお母さんがいる感じ。私にとって欠かせない人ばかり、もうただただ優しいなって、感謝の気持ちでいっぱい」
凍えるような寒さの豪雪地帯に、温かな家族のような支え合い。玲さんの奮闘は、きょうも続きます。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
23 comments
スーパーが維持できなくて行商人が復活するとはなあ
社会が退化してんぞ
すごいわ この人は
玲さん!ご苦労様です。おからだに気を付けてお元気にお過ごしください。おこごましいですが皆々様に成り代わり、心から御礼申し上げます。いつもありがとうございます。貴女のような心優しい方がおられるから、この日本も捨てたものじゃないですね。本当にありがとうございます。
居なかだつたら、ほんとに、ありがたいよ、むかし、いなかで、みやこ、はるみさんの、うたかけて、きてたゆな、
昔、金の代わりに、込めと、変えていたな、政治家なんか、なにも、わかつていないもんな、
こういう人の為に税金使って欲しい。
colabとかの公金チューチュー左翼連中に税金を割くのなら、こういう地道に頑張って人様の役に立ってる人にこそ補助して欲しいわ。議員は見て見ぬふりするな。
彼女は立派な女性だよ。
※日本はいつ頃から「高齢者」や「地方」を切り捨てる社会構造になってしまったんだろう??居眠りばかりしている政治家たちに大金が流れ…地方の高齢者に寄り添う人たちは自分の時間を削って限界を超えた生活をしながら支え合って生きている。。こんな日本に未来なんかあるはずがない。。
めっちゃかっこいい…!わたしも、れいさんのように…とはおこがましいかもしれないけど、困っている人・動植物の役に立つことができたらうれしいです。
過疎化の進んでいる場所に住んでる人は 都市に移住して無駄な税金を減らすようにして欲しい。
本当にすごい人
ありがたいね!
買い物の天使ですね!
こんな人が今の日本にまだ居るんだな損な事は一切しなくなった雪かき迄しても利益には繁栄されない人の為に体を酷使してる
首都圏でも高齢者増えているから移動販売は人気です。無くなっては元も子もないので収支がトントンにはならないようにしてあげたいですね
移動販売は高齢化が進む高級住宅街にも必要、それにかなりの利益が見込まれると思います。
自分の地域もお金持ちの高齢者が多く町内会などで移動販売が来てくれれば…と話す高齢者が多いそうです。
事故しないように、頑張ってください。
メーカーがパリダカのサポートトラックみたいなのを移動販売者に改造してプレゼントしてほしい
品物を見て買って貰いたい、週に一度の買い物が楽しみ、分かるなあ。要介護の母親を車椅子でスーパー連れてくと見てるだけで嬉しくなるって言ってた、長く主婦やってたからスーパー行って値段見てどれがお得かって考えてると「まだ自分はアタマがボケてないな」って思うんだって、コレ見てて涙が出てきた。有難うね。
もう本当に申し訳ありません…. 俺にもっと力が有ればっていつも思う。今…涙止まらない。本当に普通の事なんだけど、人間誰もが皆求めている事の本質や、人間である事の証明を垣間見た様な気がする。俺は…泣くのは嫌だ。 今むちゃくちゃ怒ってるんだ…..この国の何処が先進国なんだよ? ふざけやがって… もしも辛うじてそうなら、それは、玲さんみたいな人がいるからだろう⁈
What a nice lady to drive in the snow to bring the market to the people in the countryside!
今は移動販売、殆ど見なく為ったな。小さい頃、火・金とワゴン車で来てくれた移動販売の小父さんの来るの、楽しみだった。角田さん、体調に気を付け頑張って下さい。
素晴らしいですとても有難いです、身体に気を付けてください
ロンドンで買った高級ネクタイ20本の代金で、この車もう1台買えるべ?